ブタTLR2およびTLR6のクローニングとMycoplasma hyopneumoniae 自然免疫応答への関与

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要約

ブタTLR2およびTLR6のcDNAをクローニングし、その塩基配列および染色体上の位置を決定した。また、肺胞マクロファージでの発現と、Mycoplasma hyopneumoniae (Mhp)刺激による炎症性サイトカインTNF-α産生への関与を示し、TLR2およびTLR6が、宿主であるブタがMhpの構成成分を認識するレセプターとして機能していることを示唆した。

  • キーワード:ブタ、Toll-like receptor、Mycoplasma hyopneumoniae 、自然免疫、TNF-α
  • 担当:動物衛生研・免疫研究部・免疫機構研究室
  • 連絡先:電話029-838-7857、電子メールでの問い合わせはこちらから。
  • 区分:動物衛生
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ブタマイコプラズマ肺炎は、国内の養豚場に広く浸潤し、養豚産業に大きな経済的被害を及ぼしている。また、複合感染症や日和見感染症の原因病原体としてブタ呼吸器病症候群の基礎疾患の1つに挙げられ、家畜衛生上大きな問題となっている。

一方、近年、マクロファージで病原体の構成成分を認識し、宿主の自然免疫応答に深く関与する、Toll-like receptor(TLR)群が注目されている。そこで、本研究では、ブタマイコプラズマ肺炎を引き起こすMycoplasma hyopneumoniae (Mhp)を宿主であるブタのマクロファージが認識する分子機構を明らかにするために、マイコプラズマ属を認識する宿主レセプターの候補分子であるTLR2およびTLR6に着目して以下の解析を行った。

成果の内容・特徴

  • ブタ肺胞マクロファージをLPS刺激して得たcDNAライブラリーから、PCR法を用いて、ブタTLR2およびTLR6のcDNAをクローニングし、その塩基配列を決定した。
  • 2-color FISH法により、TLR2およびTLR6遺伝子はともにブタ8番染色体(SSC8)上に存在することがわかった(図1)。また、RH mapping法を用いて、既存のブタゲノム地図上での詳細な位置決定を行ったところ、やはりブタ8番染色体上のSSC8q21.1→21.5(TLR2)およびSSC8p11.1→21.1(TLR6)にそれぞれ存在することが明らかとなった。
  • 抗ブタTLR2およびTLR6ポリクローナル抗体を作製し、ウェスタンブロット法によりブタ肺胞マクロファージにおけるTLR2およびTLR6の発現を明らかにした。
  • Mhp死菌で刺激したブタ肺胞マクロファージからのTNF-α産生は、抗ブタTLR2およびTLR6抗体の添加により相加的に抑制された(図2)。

成果の活用面・留意点

  • これらの分子のクローニングは、Mhpに対する宿主の自然免疫および獲得免疫応答の解析に貢献する。
  • ブタ8番染色体上にはTLR群の他、IL-2、IL-15およびIL-21等の自然免疫に関与する遺伝子が多数存在しており、ゲノム解析の重要なターゲットとなりうる。
  • 抗ブタTLR2およびTLR6抗体は、ブタマイコプラズマ肺炎病巣での主要な炎症性サイトカインであるTNF-α産生を抑制することから、ブタマイコプラズマ肺炎の制御技術へと応用できる可能性がある。

具体的データ

図1 2-color FISH法によるTLR2およびTLR6遺伝子のブタ8番染色体上へのマッピング

 

図2 Mhp刺激したブタ肺胞マクロファージからのTNF-α産生の抗ブタTLR2およびTLR6抗体による抑制

 

その他

  • 研究課題名:マイコプラズマ肺炎の宿主遺伝子・蛋白質の発現解析
  • 課題ID:13-04-01-01-22-03
  • 予算区分:委託プロ/BSE・人獣 (ZCP-16)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:宗田吉広、上西博英 (農業生物資源研究所)、菊間礼子、吉原一浩、下地善弘、山本竜司 (農業生物資源研究所)、浜島紀之(農業生物資源研究所)、横溝祐一、森 康行
  • 発表論文等:Muneta et al. (2003) J. Interferon Cytokine Res. 23:583-590.