羊・山羊の扁桃からの異常プリオン蛋白質検出法のサーベイランスへの応用

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要約

羊スクレイピーでは異常プリオン蛋白質(PrPSc)が中枢神経系に加えて、リンパ組織にも蓄積することが知られている。リンパ組織からのPrPScの迅速検出法を開発し、我が国のサーベイランスに応用している。

  • キーワード:ヒツジ、ヤギ、スクレイピー、異常プリオン蛋白質、扁桃、サーベイランス
  • 担当:動物衛生研・プリオン病研究センター・病原・感染研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7757、電子メールwww-niah@naro.affrc.go.jp
  • 区分:動物衛生
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

牛海綿状脳症(BSE)の発生を受けて,へい死した羊・山羊の伝達性海綿状脳症(TSE)のサーベイランスが実施されている。羊・山羊のスクレイピーでは 中枢神経系での異常プリオン蛋白質 (PrPSc)の蓄積に先立ち、リンパ組織に PrPScが蓄積することが知られている。そこで扁桃からのPrPScの迅速検出法を確立し、我が国のTSEサーベイランスに応用する。

成果の内容・特徴

  • 本課題で確立したリンタングステン酸沈殿による扁桃からのPrPSc検出法は、従来法よりも迅速かつ効率的である。
  • 確立した扁桃からのPrPSc迅速検出法をサーベイランスに導入し、2003∼2005年にかけて735件のサーベイランスを行い、4頭のスクレイピー感染羊を摘発している(表1)。
  • スクレイピー実験感染羊では接種9ヶ月後から扁桃でのPrPScの蓄積が認められ、発症前感染羊を摘発できる可能性が示されている(表2)。
  • スクレイピー野外発生例では、脳でPrPScが検出されたにも関わらず、扁桃でPrPScが検出されない個体が認められる(表2、図1)。

成果の活用面・留意点

  • 本法は、我が国のTSEサーベイランスにおいて扁桃からのPrPSc検出に活用されている。
  • リンパ組織でのPrPScの蓄積の有無を規定する要因を明らかにする必要性が認められる。
  • 本研究で開発されたPrPSc迅速検出法により、サーベイランスの迅速化と検出率の向上が見込まれる。
  • TSEサーベイランスにおける扁桃の検査意義について見直す必要が考えられる。

具体的データ

表1 死亡羊、山羊のTSEサーベイランス実績

 

図1. スクレイピー発症羊(1列)および同居羊(2-11列)について殺処分後に脳、扁桃からPrPSc検出を行った例。

 

表2 羊スクレイピーからの異常プリオン蛋白質(PrPSc)の検出

 

その他

  • 研究課題名:PrPSc特異プローブを用いたPrPScの構造解析
  • 課題ID:13-02-01-02-66-05
  • 予算区分:委託プロ(BSE)
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:嶋田希実、林浩子、大久保由佳、岩丸祥史、今村守一、高田益宏、メアリー・ジョー・シュマー、品川森一、横山隆
  • 発表論文等:Shimada et al. (2005) Microbiol. Immunol.49: 801-804.