Histophilus somni主要外膜タンパク質の構造および免疫学的特性
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要約
Histophilus somniの主要外膜タンパク質(MOMP)には8個の表在性ループ構造と16個のβ
シート構造が存在し、菌株間で異なる配列は主にループ部位に認められる。MOMPの抗原型1及び2特異エピトープはMOMPの7番目のループ部位に位置
し、このエピトープ配列の違いが免疫学的特性を決定している。
- キーワード:ウシ、Histophilus somni、主要外膜タンパク質、ループ構造、エピトープ
- 担当:動物衛生研・感染病研究部・細菌病研究室
- 連絡先:電話029-838-7739、電子メールwww-niah@naro.affrc.go.jp
- 区分:動物衛生
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
ウシの髄膜脳脊髄炎や肺炎の原因菌であるHistophilus
somniの菌体表面に最も多く存在するタンパク質は主要外膜タンパク質(MOMP)と呼ばれている。MOMPには菌株間で抗
原性や質量に違いがあるため、菌株の抗原型・グループ型別に利用されているが、MOMP分子の多様性について分子レベルでの解析はなされていない。本研究
課題ではH.
somniのMOMP遺伝子のクローニングと配列情報の解析に基づいて、MOMPの構造上の特徴を明らかにするとともに、MOMP特異抗体のエピトープマッピングを行う。
成果の内容・特徴
- PCR法によりH. somni基準株である8025株からクローニングしたMOMP遺伝子領域
の塩基配列解析の結果、1140
bpのオープンリーディングフレームが確認され、19残基のシグナル配列を含む380残基のアミノ酸配列をコードしていた。相同性検索の結果、パスツレラ
科細菌のポーリンタンパク質と高い相同性を示した。T7発現プラスミドベクターを用いることにより、質量40
kDaの大腸菌発現産物が得られ、発現タンパク質は抗MOMP特異抗体と反応することが確認された。
- 8025株に加えて6株のMOMP遺伝子の塩基配列を決定した。8025株と比較した結果を表1に示す。MOMPグ
ループ1に属する4株は遺伝子長・配列ともに高度に保存されていたが、MOMPグループ3cの2株と3aの1株では配列の相同性と長さに明らかな違いが認
められた(表1)。MOMPグループ間の抗原性と質量の違いはこのようなMOMPアミノ酸配列の違いに基づいている。
- MOMPの2次構造予測の結果、8個の表在性ループ構造と16個のβシート構造の存在が予測され、菌株間で配列に違
いが認められる箇所は主に分子表面のループ上に存在することが示された(図1)。菌株間で高度に保存されているモノクローナル抗体59-8-2及び
81-7-19が認識するエピトープはそれぞれ3番目のループ
(L3)及び7番目のβシート(β7)上に同定され、モノクローナル抗体52-21-4が認識するMOMP抗原型1及び2に特異的な菌体表面エピトープ
(アミノ酸配列PFALSYV)は7番目のループ上に同定された(図1、表2)。
成果の活用面・留意点
- MOMPの遺伝子領域が同定され、MOMPの構造や免疫学的特性を分子レベルで理解することが可能となった。MOMPの特性をさらに追究し、ワクチン開発への応用性を検討していく必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:Haemophilus somnus主要外膜タンパク質の分子タイピング
- 課題ID:13-02-02-01-30-05
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2003∼2005年度
- 研究担当者:M. S. R. Khan、田中暁典、井出久浩、星野尾歌織、花房泰子、田川裕一
- 発表論文等:
1) Khan et al. (2005) Vet. Microbiol. 107:179-192.
2) 田川ら 特許公開(特開2004-222593)「反芻獣病原細菌の主要外膜タンパク質をコードする遺伝子」