Salmonella Typhimurium DT104はADP-ribosyltransferase毒素と相同性を示す遺伝子(artAB)を保持している
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
Salmonella Typhimurium (ST)ファージ型104(DT104)の溶原化ファージゲノム中に百日咳菌毒素のADP-ribosyltransferaseと相同性を示す遺伝子(artAB)を見いだした。artABはDT104において共通に保持されており、DT104の病原因子としての可能性が注目される。
- キーワード:ウシ、サルモネラ、病原因子、溶原化ファージ、ADP-ribosyltransferase
- 担当:動物衛生研・北海道支所・臨床微生物研究室
- 連絡先:電話011-851-5226、電子メールwww-niah@naro.affrc.go.jp
- 区分:動物衛生
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
近年Salmonella
Typhimurium(ST)ファージ型DT104は人の食中毒や家畜のサルモネラ症の原因菌として注目されており、我が国の家畜においてもその分離例
が報告されている。現在のところDT104は他のファージ型菌よりも病原性が強いという実証はないものの、疫学的観点から本菌が新たな病原因子を獲得した
可能性が指摘されている。そこで、ゲノム解析によりDT104における病原因子を探索した。
成果の内容・特徴
- DT104の溶原化ファージをマイトマイシンC処理により誘導し、得られたファージゲノムを制限酵素HindIIIにより消化し、0.4
kbの断片をクローニングした。クローニングした断片のシークエンスはSTファージ型DT64で報告されている溶原化ファージの遺伝子と相同性を示した。このシークエンスを起点として、Genome
Walking法により、その周辺領域約4kbのシークエンスを決定した。その結果、百日咳菌の毒素として知られているADP-ribosyltransferaseと相同性を示す2つの遺伝子を見いだし、これらをartA及びartBとした(図1)。
- ArtA及びArtBは、S.Typhi及びS.Paratyphi Aのゲノム中に報告されているputative
pertussis toxin genesと高い相同性を示した(図2)。
- artAをプローブとしてハイブリダイゼーションを実施した結果、artAは16株のDT104全てに検出され、DT104以外の菌株では、14株中1株(NCTC73)のみに検出された(図3)。
- artABの周辺領域にある5つのオープンリーディングフレーム(ORF)はすべて、ファージ由来のシークエンスに相同性を示し(図1)、また、サザンハイブリダイゼーションにより、artAプローブは約43
kbのファージDNA分画と反応することから、artABは溶原化ファージ上にあることが示唆された(図4)。
成果の活用面・留意点
- DT104がADP-ribosyltransferaseを産生している可能性が示唆された。ADP-ribosyltransferaseは種々の病原細菌における毒素として知られていることから、本菌の新たな病原因子として注目される。
- artABがDT104に共通して保持されていることから、当該遺伝子のPCR等を用いた検出がDT104のスクリーニング法として応用可能と考えられる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:牛由来サルモネラにおける病原性関連因子についての解析
- 課題ID:13-02-03-01-12-05
- 予算区分:委託プロ(人獣)
- 研究期間:2003∼2005年度
- 研究担当者:内田郁夫、西森 敬、田中聖、牧野壮一(帯広大)、菅野 徹、石原涼子、畠間真一、北野理恵、木嶋眞人、鮫島俊哉、秋庭正人、中沢宗生、横溝祐一、斉藤真理子(北海道根室家保)
- 発表論文等:Saitoh et al. (2005) Microbiology. 151:3089-3096.