カビ毒デオキシニバレノールは牛や豚好中球の活性酸素の産生を抑制する
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要約
フザリウム属のカビが産生するカビ毒デオキシニバレノールは、牛と豚の好中球の殺菌作用に関わる活性酸素の産生を濃度依存的に抑制するが、炎症巣への細胞集積の指標である遊走能には影響を与えない。
- キーワード:ウシ、ブタ、デオキシニバレノール、好中球、活性酸素
- 担当:動物衛生研・安全性研究部・安全性評価研究室、毒性病理研究室
- 連絡先:電話029-838-7823、電子メールwww-niah@naro.affrc.go.jp
- 区分:動物衛生
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
デオキシニバレノール(DON)は、フザリウム属カビ由来の代表的な飼料汚染カビ毒(マイコトキシン)である。DONは摂取家畜、
特に豚に顕著に、食欲不振や嘔吐、下痢を起こし、発育を阻害することが知られているが、最近では免疫機能にも影響し、疾病に対する感受性を高める可能性も
指摘されている。しかし、その影響の実態については具体的情報が乏しい。本研究では、DONが家畜の免疫細胞に与える影響について、生体防御に関わる代表
的な細胞である好中球の2種類の機能、すなわち殺菌活性に関わる活性酸素の産生と炎症巣への細胞集積に関わる遊走能を指標として、in
vitroで検討する。
成果の内容・特徴
- 牛及び豚末梢血から分離した好中球をDON(最終濃度10-5?10-9M)に2時間37℃下で感作させ、ルミノー
ル依存性化学発光法で活性酸素の産生を観察したところ、牛及び豚好中球の化学発光能は10-5Mではそれぞれ平均して42及び35%、また10-6Mでは
それぞれ19及び26%低下した。また、それ以下の濃度でも軽微な化学発光能の抑制傾向が観察された。これらのDON濃度依存的な抑制傾向は牛及び豚とも
同程度で、動物種による感受性の差は見られなかった(表1)。
- 牛及び豚好中球にDON(最終濃度10-5∼10-9M)を添加し、アガロース平板法で37℃、5%炭酸ガス下で
18時間後の細胞遊走面積により遊走能(随意運動能)を測定した。牛及び豚細胞の遊走能は、いずれも、最高濃度のDON(10-5M)処理によっても全く
影響を受けなかった(表2)。
成果の活用面・留意点
- DONが牛や豚の主要な免疫細胞である好中球の殺菌活性を濃度依存的に抑制することをin
vitroで初めて明らかにした。これはDONが家畜の免疫機能、特に好中球が担うと考えられる非特異的生体防御に及ぼす影響の全容を解明する上で重要な手がかりである。
- 今後はDONによる活性酸素抑制の作用機序を解析することと、in
vivo実験あるいは野外事例の分析を通して、DONの持つ免疫系への影響解明をさらに進めることが必要である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:デオキシニバレノールが家畜の免疫系に与える影響の解析
- 課題ID:13-06-02-*-10-04
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2004年度
- 研究担当者:村田英雄、三上 修、嶋田伸明、中島靖之、高山秀子(熊本中央家保)
- 発表論文等:Takayama et al. (2005) J. Vet. Med. Sci. 67: 531-533.