肥料用肉粕液の製造工程におけるプリオン不活化法の検討

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要約

ウエスタンブロット法による異常プリオン蛋白質(PrPSc)の検出を指標として、肥料用の肉粕液の製造工程におけるプリオン不活化の程度を測定した。肉粕液中のPrPScは加熱アルカリ処理により少なくとも1/106以下に減少することが確認された。

  • キーワード:プリオン、不活化、牛海綿状脳症、ウエスタンブロット、肥料用肉粕
  • 担当:動物衛生研・プリオン病研究センター・病原・感染研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7757、電子メールwww-niah@naro.affrc.go.jp
  • 区分:動物衛生
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

わが国でBSEが確認されて以来、感染性を含む危険性のある牛の組織(脳、眼、脊髄、回腸遠位部など)は特定危険部位として廃棄、 焼却処分されヒトの食用から除かれている。これらの組織を含むいわゆる「屑肉」は、BSE発生以前は肉骨粉など様々な製品の原材料として用いられていた。 屑肉をアルカリ処理した肉粕液の園芸用肥料としての利用もその一つであった。BSE発生以前に製造された製品のプリオン汚染の不活化の程度が不明または評 価できないことから、その取り扱い、処分方法が大きな問題となっている。そこで、ウエスタンブロット法(WB)によるPrPScの検出を指標としたプリオン不活化評価法を確立し、肥料用肉粕液の製造工程におけるプリオンの不活化の程度を調べる。

成果の内容・特徴

  • 肉粕液にスクレイピー感染マウス脳乳剤を混入させた各試料からサルコシル抽出およびリンタングステン酸沈殿によるPrPScの回収を試みたところ、感染マウス脳0.25μg当量のPrPScをWBで検出することが可能であった(図1)。
  • 実際の液体肥料の製造工程に準じて、感染マウス脳, 肉粕, 水酸化カリウム溶液, 蒸留水の混合物を85℃1時間処理した。処理後のサンプル(0.25g脳当量)からPrPScの検出を試みたが、図2に示すように特異的なシグナルは検出されなかった。
  • 遺伝子組換えマウス(tga20)を用いた動物接種試験でも、加熱アルカリ処理により潜伏期間が延長し、感染価の低減が示されたが、高力価のプリオン(0.125g脳当量)の完全な不活化には至らなかった(表1)。

成果の活用面・留意点

  • WBを用いたPrPSc不活化の検定では、材料の処理前後におけるPrPSc検出限界の差を比較することにより、PrPSc減少の程度を評価することが可能である。
  • 動物接種試験の結果から加熱アルカリ処理法によるプリオンの伝達性の低下が認められ、PrPScの検出を指標としたWBは動物接種試験に近似の検出感度を示すと考えられる。
  • 加熱アルカリ処理法で、高力価のプリオンを完全に不活化することはできない。
  • BSE汚染リスクを避けるには、単独の不活化処理に頼らず、原材料から特定危険部位を除くなど、複数の対策を組み合わせることが必要と考えられる。

具体的データ

図1.肉粕液に混入したPrPScの検出

 

図2.アルカリ処理した脳材料からのPrPScの検出の試み

 

表1 アルカリ処理したスクレイピーマウス脳の伝達試験

 

その他

  • 研究課題名:PrPSc特異プローブを用いたPrPScの構造解析
  • 課題ID:13-02-01-02-66-05
  • 予算区分:委託プロ(BSE)
  • 研究期間:2003∼2007年度
  • 研究担当者:横山 隆、嶋田希実、田川裕一、牛木祐子、岩丸祥史、林浩子、品川森一
  • 発表論文等:Yokoyama et al. (2006) Soil Sci. Plant Neutr. 52: 86-91.