小麦の製粉歩留と細胞壁多糖類の含量との関係
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要約
小麦の製粉歩留は胚乳組織のアラビノキシラン含量の影響を強く受け、β-グルカン含量にはほとんど影響を受けないことから、アラビノキシランは硬質小麦および軟質小麦に共通する製粉歩留の支配要因の一つである。
- キーワード:小麦、製粉歩留、細胞壁多糖、アラビノキシラン、β-グルカン
- 担当:作物研・麦類研究部・麦類品質制御研究室
- 連絡先:電話0298-38-8868、電子メールkomae@affrc.go.jp
- 区分:作物・冬作物
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
国産小麦の製粉歩留は外国産小麦に比べて劣り、早期改善が求められてきた。製粉歩留は、ふすま画分の細胞塊量に依存し、その多少は胚乳細胞壁および細胞質の性質によって大きく異なることが考えられた。製粉歩留の支配要因の一つは細胞質の硬軟質性に関与する澱粉顆粒結合型プロインドリンの有無が知られているが、硬軟質性に関係ない共通の支配要因は明らかにされていなかった。そこで、本研究においては、胚乳細胞壁多糖類に着目し、あらたな製粉歩留の支配要因の解明を目的とした。
成果の内容・特徴
- 小麦挽砕粉に含まれる細胞塊は、澱粉顆粒と会合して凝集塊を生じ、ふるい抜けを低下させる(図1)。また、この細胞塊量は、硬質小麦は少なく、軟質小麦には多くなる傾向がある。
- 小麦粉のアラビノキシランの含量と製粉歩留との関係は、硬質小麦(r=-0.844**)および軟質小麦(r=-0.729**)ともにアラビノキシランの影響を受ける(図2)。
- 小麦粉のβ-グルカン含量と製粉歩留との関係は、軟質小麦(r=-0.325*)については若干影響を受けるが、硬質小麦(r=-0.217)についてはほとんど影響を受けない(図3)。
成果の活用面・留意点
- 胚乳組織の低アラビノキシラン化を図ることによって高製粉性小麦の開発が可能になる。
- 栽培環境によって同一品種の胚乳アラビノキシラン含量が変動する場合がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:硬軟質小麦の製粉性と胚乳細胞壁成分との関連解明による簡易評価技術の開発
- 予算区分:21世紀1系
- 研究期間:1999~2001年度
- 研究担当者:加藤常夫(現栃木農試)、小松 晃、小前幸三