日本水稲品種間で検出できるSSRマーカー多型情報
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要約
SSRマーカーを利用すると、日本水稲121品種間すべてでDNA多型が検出され、多型率と近縁係数との間には負の相関が認められる。この情報を活用することにより、日本水稲品種間の雑種集団でもDNA多型に基づく分析や選抜が可能となる。
背景・ねらい
ゲノム中に散在する数塩基の単純反覆配列(SSR: Simple Sequence Repeats)の繰り返し数の違いをPCR法により検出するSSRマーカーを利用すれば、日本水稲品種間でも、RFLPマーカーに比べて多数のDNA多型が得られる。そこで、日本水稲品種を用いて、実際の育種場面での雑種集団の分析や選抜を効率的に行うために必要となるDNA多型の検出を行う。
成果の内容・特徴
- 日本水稲121品種(作付け上位の品種、育成の母本として利用されている育成品種・系統、在来品種)は8個のSSRマーカーによるDNA多型ですべて区別することができる。
- 日本水稲121品種間についての系譜から算出される近縁係数とSSRマーカー191個(染色体1~12、マーカー間平均8.2cM)による多型情報から算出されるNeiの遺伝距離との間には負の相関が認められ、コシヒカリの場合、他の120品種との間の近縁係数と遺伝距離との相関係数は-0.87である(図1)。従って、系譜の明らかな日本水稲品種では、系譜の情報からDNA多型の多寡の大まかな予測が可能となる。
- SSRマーカーによる日本水稲品種間のDNA多型率は、特に近縁な品種間の場合を除き、20~30%前後である(表1)。従って、日本水稲品種間の雑種集団で、食味や玄米品質等、日本水稲に由来する形質についての分析や選抜を行う際に利用することのできるDNAマーカーの設定が可能である。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、多型の検出にDNAシーケンサーを使用して得られた結果である。DNAシーケンサーを利用することにより、多型の検出率がアガロースゲル電気泳動の2~3倍に向上し、遺伝的に近縁な日本水稲品種間でも多数のDNA多型を検出することが可能となる。
- 本成果のSSRマーカーの多型情報は作物研究所のホームページで公開する予定である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:SSRマーカーを利用した日本型イネ品種間の多型検出
- 課題ID:08-01-05-01-02-04
- 予算区分:DNAマーカー
- 研究期間:2002~2004年度
- 研究担当者:出田 収、加藤 浩、根本 博、安東郁男、井辺時雄
- 発表論文等:Ideta et al. (2004) Proc. of the World Rice Research Conference 2004 p.127