イネ近縁野生種Oryza australiensis 由来のトビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph10 (t)のマッピングと選抜マーカーの開発

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要約

トビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph10 (t)は第12染色体長腕の新規に作製したSSRマーカーHM43と0cMで連鎖する。また,同遺伝子は不良形質である長稈と不稔性と連鎖する。

  • キーワード:トビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph10 (t)、Oryza australiensis、SSRマーカー、長稈、不稔、イネ
  • 担当:作物研・稲研究部・多用途稲育種研究室
  • 連絡先:電話029-838-8808、電子メールnics-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:作物・稲
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

トビイロウンカ抵抗性遺伝子の利用は、トビイロウンカの被害を低減させるもっとも効率的手段であるが、既存の抵抗性品種・系統では加害性のバイオタイプの出現・飛来による抵抗性の崩壊が懸念されている。このため、新たな抵抗性遺伝子の探索が求められ、これまでに10数個の遺伝子が同定された。このうちBph10 (t)遺伝子は異種ゲノム種のOryza australiensis から導入され、第12染色体長腕に座乗することがすでにわかっているが,詳細な座乗位置は不明であり、PCR型の選抜マーカーも作出されていない。そのため、Bph10 (t)についてDNAマーカーによる染色体座乗位置の詳細な決定と選抜マーカーの作出を行い、長稈と不稔との連鎖についても明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 国際稲研究所が育成したいイネ系統IR65482-4-136-2-2はO.australiensis 由来トビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph10 (t)もつ.Bph10 (t)は第12染色体長腕上の新たに作出したSSRマーカーHM43と0cMの遺伝的距離で密接に連鎖する(図1)。なお,IR65482-4-136-2-2の交配組合せはIR31917-45-3-2/O.australiensis //IR31917-45-3-2*2である。
  • Bph10 (t)遺伝子をマッピングした解析集団ヒノヒカリ*6/IR65482-4-136-2-2ではと同遺伝子は不稔性と8.6cMで連鎖し、長稈とは2.1cM以内で密接に連鎖する(図1、2)。

成果の活用面・留意点

  • SSRマーカーHM43はBph10 (t)の選抜マーカーとして利用できる。
  • トビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph10 (t)は長稈と密接に連鎖しているため、育種上組換型を選抜する必要がある。

具体的データ

図1. 第12染色体上のBph10(t),不稔遺伝子および長稈形質の座乗位置

 

図2.SSRマーカーHM43のアガロースゲル電気泳動像

その他

  • 研究課題名:イネのトビイロウンカ抵抗性に関するDNAマーカーを利用した育種法の開発
  • 課題ID:08-01-05-02-03
  • 予算区分:DNAマーカー
  • 研究期間:2000~2003年度
  • 研究担当者:平林秀介、梶 亮太、岡本正弘、根本 博、安東郁男、小川紹文、井辺時雄
  • 発表論文等:1) 平林ら (2002) 育種学研究4 (別2) 292