ダイズペクチンメチルエステラーゼは蒸煮大豆の硬さに関与する

要約

ペクチンメチルエステラーゼのホモログであるダイズ遺伝子Glyma03g03360には、少なくとも4つの多型が存在する。このタンパク質が、酵素活性に重要なアミノ酸を含むC末端部位を欠失すると、蒸煮大豆は柔らかくなる。

  • キーワード:ダイズ、蒸煮大豆、ペクチンメチルエステラーゼ
  • 担当:作物開発利用・利用・大豆品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話029-838-8260
  • 研究所名:作物研究所・畑作物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

煮豆、納豆、味噌なと?の大豆加工食品の加工適性においては、蒸煮大豆(煮豆)の硬さか?重要視されている。蒸煮大豆の硬さについては品種間差か?存在することか?知られており、成分分析を中心に研究か?進められてきたか?、その要因は明らかになっていない。そこて?、本研究て?は、蒸煮大豆の硬さか?異なる「納豆小粒」 と「兵系黒3号」の組換え自殖系統(RILs)を用いて、DNAマーカーを用いた遺伝解析により、両者の差に寄与する原因遺伝子を特定する。

成果の内容・特徴

  • 大豆品種「納豆小粒」と「兵系黒3号」のRILsを用いた解析より、蒸煮大豆の硬さに関するQTL(qHbs3-1)の候補遺伝子はGlyma03g03350Glyma03g03360の2遺伝子に絞られる(図1)。さらにDNA配列と遺伝子発現解析より、qHbs3-1Glyma03g03360であると結論付けられる。
  • ペクチンメチルエステラーゼのホモログであるGlyma03g03360では2品種間で翻訳領域(ORF)の配列に1塩基の多型があり、「兵系黒3号」ではタンパク質のC末端部位が欠失する(図2)。
  • さらに22品種を解析した結果、Glyma03g03360の配列には納豆小粒型、兵系黒3号型の他にさらに2パターンが検出される。それら遺伝子型をA、A ́、B、B ́とする(図2、表1)。A ́型では相同性の低いスレオニンがセリンに変化し、B ́型ではC末端部位が欠失する。
  • .東北農研(秋田)、作物研(茨城)、九州沖縄農研(熊本)の試験圃場で栽培された2013年産大豆において、Glyma03g03360の失活が推測されるB及びB ́型の大豆品種は、A及びA ́型の大豆品種より蒸煮大豆が有意に柔らかい(図3)。なお、A型とA ́型、もしくはB型とB ́型の間には有意な差は検出されない(図表省略)。

成果の活用面・留意点

  • 本実験では、20°Cで20~24時間浸漬した後、沸騰水中で10分間加熱した大豆種子の破断応力を硬さの指標としている。
  • 本研究で明らかにした24品種のGlyma03g03360遺伝子型情報は、加工適性を考慮した品種育成において有用である。
  • Glyma03g03360の多型情報は、蒸煮大豆硬さ判定用のDNAマーカー開発に役立てられる。
  • 遺伝子の配列情報はデータベース(Daizu base、Soybase等)より入手できる。その他RILsの解析情報等は2014年度研究成果情報「蒸煮大豆の硬さに関与するQTLの同定とDNAマーカーの開発」参照のこと。

具体的データ

その他

  • 中課題名:気候区分に対応した安定多収・良品質大豆品種の育成と品質制御技術の開発
  • 中課題整理番号:112f0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2015年度
  • 研究担当者:戸田恭子、平田香里、羽鹿牧太、増田亮一、安井健、高橋浩司、山田哲也
  • 発表論文等:Toda K. et al. (2015) J. Agric. Food Chem. 63: 8870-8878