サツマイモのマルトース生成におけるβ-アミラーゼ活性とでん粉糊化温度の影響
要約
蒸したサツマイモのマルトース生成量は塊根のβ-アミラーゼ活性とともに増加するが、活性が一定値を超えると増加が抑制される。一方、マルトース生成量とでん粉糊化開始温度との間には負の相関(r=-0.53)が認められる。
- キーワード:サツマイモ、マルトース生成、でん粉糊化開始温度、β-アミラーゼ活性
- 担当:ブランド農産物開発・カンショ品種開発・利用
- 代表連絡先:電話 029-838-8500
- 研究所名:作物研究所・畑作物研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
サツマイモの重要な食味要素である甘さは加熱されて糊化したでん粉がβ-アミラーゼにより分解されて生じるマルトースの量に大きく影響されるが、生成量を決める要因は充分に解明されていない。そこで、マルトース生成量とβ-アミラーゼ活性およびでん粉糊化温度との関係を定量的に解析し、サツマイモの加熱調理後の甘さに違いが生ずるメカニズムを明らかにする。
成果の内容・特徴
- サツマイモ塊根のβ-アミラーゼ活性が高いほど蒸した時に生成するマルトースの塊根重量当たりの含量は高くなるが、アミラーゼ活性が約0.2 m mol /maltose /min/ mg proteinより高くなると、マルトースの増加は抑制される(図1)。
- 蒸したサツマイモの塊根重量当たりのマルトース含量と塊根に含まれるでん粉の糊化開始温度との間には負の相関(r=-0.53)が認められる(図2)。特に、β-アミラーゼ活性が高い塊根では相関(r=-0.72)が高く(図表省略)、このような塊根ではマルトース生成に対するでん粉糊化特性の寄与が大きいと考えられる。
- β-アミラーゼ活性が同程度の塊根の間ではでん粉糊化温度が低い方が蒸した時に生成するマルトース量が多い(図3)。
成果の活用面・留意点
- サツマイモの食味にとって重要な因子である甘さに影響を及ぼす要因が明らかになり、良食味(高糖度)品種の開発に資する。
- 地温の変化等によりでん粉糊化温度が変わると、β-アミラーゼ活性が同程度の塊根でもマルトース生成量が異なる可能性がある。
- マルトース増加の抑制が認められるβ-アミラーゼ活性の閾値は約0.2 m mol maltose / min /mg protein である。
- 本研究においては、ラピッドビスコアナライザーによりでん粉懸濁液(濃度7%)の粘度上昇が認められた時の温度を糊化開始温度とした。
具体的データ
その他
- 中課題名:高品質・高付加価値で省力栽培適性に優れたカンショの開発
- 中課題整理番号:320b0
- 予算区分:運営費交付金
- 研究期間:2012~2015年度
- 研究担当者:中村善行、藏之内利和、高田明子、片山健二
- 発表論文等:
1)中村ら(2013)日本作物学会関東支部会報28:12-13(2013)
2)中村ら(2014)日本食品科学工学会誌61:577-585(2014)
3)中村(2015)いも類振興情報125:44-48 (2015)
4)中村ら(2015)北農82:8-14 (2015)