牛はノサシバエが寄生すると、その直後に最も大きなストレスを受ける
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要約
ノサシバエが、牛に寄生すると、牛は、見繕い行動を盛んに行い、心拍数も上昇する。またストレス関連ホルモンである血液中のコルチゾール濃度も上昇する。しかし、この一連の反応は、ハエ接種直後に著しく現れ、影響は徐々に低減する。
- キーワード:放牧、害虫、ノサシバエ、ストレス、身繕い行動、心拍数、コルチゾール
- 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・害虫管理研究室、放牧管理部・衛生管理研究室
- 連絡先:電話0287-36-0111、電子メールmorimoto@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
牛は、放牧中に飛翔性家畜害虫の吸血によるストレスを受けている。これらのストレスは家畜福祉上軽減が求められるだけでなく、家畜の発育や疾病に対する抵抗力の減退の要因となりうる。そこでノサシバエの寄生が、家畜にどのようなストレスを与えているかを評価するために、牛にノサシバエを接種し、牛の見繕い行動や心拍数、血液中のストレス関連成分への影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 蚊帳内に放飼したノサシバエは、ほとんど全ての個体が速やかに牛体に付着し、試験時間内は離れることはなかった。
- 牛の身繕い行動は、ノサシバエ接種と同時に、極めて頻繁になる。しかし、時間が経過するにしたがって、ほぼ直線的に、その回数は減少する。しかし、50分後でも、ノサシバエを接種しない区よりは頻繁に身繕い行動を行う(図1)。
- 牛の心拍数は、ノサシバエを接種させた直後は3割以上増加する。しかし、それは長時間継続せず、3分後に最高値に達した後、徐々に減少する(図2)。
- ストレスにより敏感に濃度が上昇するとされる血中コルチゾール(副腎皮質ホルモンの一種)濃度は、ノサシバエ接種後から徐々に上昇する傾向が見られる(図3)。
- ストレスにより濃度が上昇するとされる血中白血球数には大きな変化が認められない(図4)。また、白血球の構成成分である好酸球、好中球核、リンパ球、単球の比率にも大きな変化は認められない。
- ノサシバエの与えるストレスは、ハエを接種した直後にもっとも大きく、その後徐々にその影響は低減する。
成果の活用面・留意点
- ハエ類の寄生による被害水準策定、家畜福祉管理の基礎資料となる。
- ノサシバエの寄生は、長期間にわたるため、睡眠や牛の摂食行動を阻害するなどの影響ある。また、ノサシバエの野外における発生は、本実験を上回る場合がある。
具体的データ




その他