3Dデジタルカメラによる放牧育成牛の体高測定

要約

正姿勢である牛体側面を3Dデジタルカメラで撮影し、画像解析ソフトウェアで解析することにより、非接触で体高を誤差4cm程度で推定でき、集牧施設のない場合でも体高計測が可能となる。

  • キーワード:放牧牛、体高、3Dデジタルカメラ、画像解析
  • 担当:自給飼料生産・利用・公共牧場高度利用
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・草地管理研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

育成牛の飼養管理において、体高等の発育状況を把握することは重要である。公共牧場を利用する農家の調査でも「発育状況の提供」に対する要望は高い。しかしながら、多頭数を草地で放牧飼養している公共牧場では、体高測定を実施している事例は少ない。そこで3Dデジタルカメラにより撮影した牛画像から体高を解析することで、非接触で放牧牛の体型を推定する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 2つのレンズを有するコンパクトタイプの3Dデジタルカメラ(富士フィルム社FinePixREAL 3DW3M専用校正機)を用いて、高さ160cm程度(牛の背線よりも上)、距離3~5mの任意の位置から牛体側面を撮影する(図1)。
  • 撮影した3D画像は、専用ソフトウェア(桜井株式会社StarPictMeasure、WindowsPC対応)を用いて解析する。その際、推定体高は、牛体側面のキ甲点と足元の座標を指定し、その距離を3回計測した平均値から求める(図2)。撮影した放牧牛の牛番号は別途野帳にて記録管理する。
  • ホルスタイン種育成牛(月齢9.8~20.8ヶ月)と、黒毛和種育成牛(月齢2.6~11.1ヶ月)を対象に、3D画像から算出した推定体高は、体尺計による測定値(実測体高)と平均誤差4cm程度で推定できる(図3)。
  • 3D画像の撮影は0.6分/頭、画像の解析に2.9分/頭の合計3.5分/頭を要する。体尺計による体高測定は、2人作業で1.5分/頭程度を要するが、3D画像では撮影は1人作業であり、解析ソフトによる作業は空き時間等で随時可能なことから、放牧草地での体高測定作業自体は省力化できると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 集牧施設のない公共牧場においても体高情報の把握が可能となる。さらに非接触で計測できることから、少人数(最低1人)での作業の安全が確保できる。
  • 推定体高値は撮影時における放牧牛の姿勢によって左右されることから、推定精度の向上のためには、頭を上げ両脚を揃えた姿勢(正姿勢)の牛画像を用いるようにする。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:預託期間拡張を可能とする公共牧場高度利用技術の開発
  • 中課題整理番号:120c4
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:喜田環樹、手島茂樹
  • 発表論文等:喜田ら(2014)日草誌、60(2):85-90