多糖類分解性酵素とグルコース併給は暑熱下で豚の窒素消化率低下を抑制する
要約
暑熱下における肥育豚への多糖類分解性酵素およびグルコースの添加給与は、飼養成績および酸化ストレスに影響を及ぼさないが、豚の消化能が低下する暑熱下では窒素消化率の低下を抑制する。
- キーワード:暑熱、肥育豚、グルコース、多糖類分解性酵素
- 担当:家畜生産・第一胃発酵・産肉制御
- 代表連絡先:電話 029-838-8611
- 研究所名:畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
肥育豚に多糖類分解性酵素を給与することにより、飼料の消化率が上昇することが報告されている。また、暑熱下で飲水中にグルコースを補給すると、ブロイラーの飼養成績が改善されることが報告されている。本実験では、消化能が低下する暑熱下で、肥育豚に多糖類分解性酵素およびグルコースを給与することにより、飼養成績、酸化ストレスおよび飼料の消化率に及ぼす影響を検討する。
成果の内容・特徴
- 供試動物は、LWD雑種の肥育前期豚(開始体重約40kg)去勢雄18頭を用い、処理区は、環境温度2水準(23°Cと30°C)下で対照区と試験区(キシラナーゼ、ペクチナーゼの複合酵素である多糖類分解性酵素を0.06%とグルコース5%添加)を設け、計4区とする。23°C下で予備飼育を2週間行った後、不断給餌、自由飲水の条件で4週間飼養する。
- 暑熱下における多糖類分解性酵素およびグルコースの給与は、飼料摂取量、増体に影響しないが、肥育豚の消化能が低下する暑熱下において窒素消化率を改善する(表1)。
- 酸化ストレスマーカーである全血中スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、尿中8-ヒドロキシ-デオキシグアノシン・クレアチニン比(8-OHdG/creatinine)、筋肉中2-チオバルビツール酸活性(TBARS)は、暑熱下より適温下で有意に高い値を示すが、多糖類分解性酵素およびグルコース添加による影響はない(表2)。
成果の活用面・留意点
- 暑熱下で豚に多糖類分解性酵素とグルコースを併給することにより、窒素消化率の低下を抑制できるが、適温下の水準には達しない。
- 本実験では、飲水中ではなく飼料中に多糖類分解性酵素およびグルコースを混合して給与している。
具体的データ
その他
- 中課題名:第一胃内発酵制御因子の解明と栄養制御による産肉特性改善
- 中課題整理番号:130e0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2009 ~2012年度
- 研究担当者:芦原茜、石田藍子、京谷隆侍、勝俣昌也
- 発表論文等:芦原ら(2014)日豚会誌、51(2):63-67