アスタキサンチン含有補助飼料の保存法

要約

包装材として抗酸化剤と脱酸素剤を封入した高密度ナイロンフィルム内装紙袋を用いることにより酸化失活しやすいアスタキサンチンを含む補助飼料を長期間安定的に貯蔵・流通させることができる。

  • キーワード:アスタキサンチン、牛、抗酸化機能性物質、脱酸素剤、補助飼料
  • 担当:家畜生産・繁殖性向上
  • 代表連絡先:電話029-838-8647
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜飼養技術研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

強力な抗酸化力を有するアスタキサンチンは酸化ストレスの改善に有効な資材であり、経口摂取によりその効果を発揮することができる。そのため、家畜においても暑熱や泌乳による酸化ストレス緩和用の補助飼料としての活用が期待されている。一方、アスタキサンチンはその強い抗酸化力が故に容易に酸素と反応し、空気中に長期間放置すると酸化して失活する。そこで、アスタキサンチンを家畜用の補助飼料資材として活用するため、アスタキサンチンの酸化を防ぎ、長期間安定的に貯蔵・流通させるための包装法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 賦形剤として一般的な飼料原料を用い、アスタキサンチン高含有酵母(ファフィア酵母)33%(アスタキサンチンとして4,000mg/kg)を含む補助飼料ペレットを製造する。
  • 補助飼料を40°Cで3ヶ月間保存すると、一般的な飼料の包装材であるポリエチレンフィルム内装紙袋では、アスタキサンチンの残存率が約40%まで低下するのに対し、高密度ナイロンフィルム内装紙袋に抗酸化剤及び脱酸素剤とともに封入した場合の残存率は約90%であり(図1)、市販品(図2)として充分な期間の貯蔵・流通が可能である。
  • 高密度ナイロンフィルム内装紙袋に入れた補助飼料を開封状態で保管すると、40°Cでは1?2ヶ月、25°Cでは4?6ヶ月でアスタキサンチンの残存率が80%を下回る(図3)。そのため、開封後は冷暗所に保管し、できるだけ早め(夏季1ヶ月以内、冬季3ヶ月以内)に給与する。
  • 初妊の乳牛に分娩予定日の4週前から分娩後12週まで上記補助飼料を毎日100g給与し、給与後4時間前後の血漿中アスタキサンチンを測定すると、分娩後1週以降有意な濃度上昇が認められ、その後は黄体機能賦活に有効な1ng/ml以上が維持される(図4)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:畜産農家(特に暑熱期の酪農家及び繁殖牛飼養農家)
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国、以下3で示す牛用混合飼料として約50t/年程度の販売実績がある。
  • その他:アスタキサンチンは家畜用飼料への添加が認められていない。開発した包装を用いて販売されている補助飼料は、飼料用として認められているファフィア酵母を添加したものである。また、抗酸化能のバランスをとるため、アスタキサンチンの含量を低減し、ビタミンC、ビタミンE及びセレン酵母が配合されている(図2)。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:受精・妊娠機構の解明と調節による雌牛の繁殖性向上技術の開発
  • 中課題整理番号:130b0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(実用技術)、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2009~2015年度
  • 研究担当者:平子誠、関根禅(日産合成)、林峰之(日産合成)、伊藤稔(日産合成)、林登(岐阜畜研)、佐藤秀俊(宮城畜試)、伊藤等(福島農総セ)、鬼澤直樹(茨城畜セ)、大澤玲(埼玉農技研)、小林幸惠(静岡畜技研)、三角亮太(熊本農研セ
  • 発表論文等:1)大澤ら(2014)日本胚移植学雑誌、36(3):149-155
    2)日産合成工業株式会社(2015)ニッサン情報、88:1-2