ソルガム新品種「涼風」及び「峰風」を活用した飼料作物作付体系の乾物収量

要約

ソルガム「涼風」とイタリアンライグラスを組み合わせた年3回刈り栽培は獣害回避型の慣行栽培よりも約3割乾物収量が高く、ソルガム「峰風」とトウモロコシを組み合わせた省力的混播2回刈り栽培は、慣行二毛作と同水準の乾物収量が得られる。

  • キーワード:混播栽培、栽培適地、獣害、ソルガム、有効積算温度
  • 担当:自給飼料生産・利用・大規模飼料生産
  • 代表連絡先:電話029-838-8647
  • 研究所名:畜産草地研究所・飼料作物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

中山間地においてはクマ等による獣害のため、飼料用トウモロコシ(Zea mays L.)が作付けできない地域が増加していることから、高消化性遺伝子を有したスーダン型ソルガム(Sorghum bicolor Moench × Sorghum sudanense [Piper] Stapf.)新品種「涼風」とイタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)を組み合わせた年3回刈り栽培体系を構築することを目的とする。さらに、春の1回の播種で夏秋2回の収穫が可能な省力的作付体系であるトウモロコシ・ソルガム混播栽培に、乾物生産力及び再生力の高いスーダン型ソルガム新品種「峰風」を導入した場合の乾物収量や栽培適地についても明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ソルガム「涼風」を5月中下旬から9月末に2回刈り栽培し、イタリアンライグラスと組み合わせる年3回刈り栽培では、年間約2.5 t/10aの乾物収量が期待でき、この値は慣行二毛作(トウモロコシ-イタリアンライグラス)よりも12%低いものの、獣害回避型の慣行作付けであるソルゴー型ソルガム年1作よりも31%高い(図1左)。
  • ソルガム「峰風」とトウモロコシの混播2回刈り栽培では、慣行二毛作と同水準の年間約2.9 t/10aの乾物収量が期待できる(図1右)。混播栽培の播種適期は4月中旬であり、「峰風」の播種量は0.5kg /10aが適する(図2)。
  • ソルガム「涼風」2回刈り栽培では、栽培期間中の15°C基準有効積算温度670°C以上の条件で1t/10a以上の乾物収量が期待でき、安定栽培が可能となる(図3A)。
  • 混播2回刈り栽培では、1番刈りでは10°C基準有効積算温度1,100°C以上の条件で1.8t/10aの乾物収量が、2番刈りでは13°C基準有効積算温度580°C以上の条件で0.7t/10aの乾物収量が期待できる(図3B、C)。関東甲信越地域における気象庁のアメダス観測地点39地点の平年値データ(4月~10月の日平均気温データ)を用いて解析すると、4月~10月の10°C基準有効積算温度が1,950°C以上となる観測地点で1番刈り及び2番刈りに必要な有効積算温度が得られる。
  • ソルガム「涼風」2回刈り栽培について5月下旬から9月末の15°C基準有効積算温度670°C、混播2回刈り栽培について4月~10月の10°C基準有効積算温度1,950°Cを適地判定指標とし、関東甲信越地域における適地判定を行うと、同地域の全3次メッシュ数に対するソルガム「涼風」2回刈り栽培の導入適地のメッシュ数割合は46%、ソルガム「峰風」とトウモロコシ混播2回刈り栽培の導入適地のメッシュ数割合は22%である。

成果の活用面・留意点

  • 「涼風」とイタリアンライグラスの年3回刈り栽培は獣害発生地域において、「峰風」とトウモロコシの混播栽培はコントラクター等による省力栽培に活用できる。
  • 「涼風」と「峰風」は紫斑点病抵抗性遺伝子を有していないので、紫斑点病に罹病しやすい。刈り遅れは被害を助長するので、適期刈りを励行する。

具体的データ

その他

  • 中課題名:大規模作付けに適した飼料作物の省力的安定多収栽培技術の開発
  • 中課題整理番号:120c1
  • 予算区分:競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2013~2015年度
  • 研究担当者:菅野勉、森田聡一郎、千田雅之、西村和志、浅井貴之(長野畜試)、横澤将美(群馬畜試)、平尾賢一(新潟畜研セ)、本谷直(茨城農総セ)、眞部幸子(茨城畜産セ)、折原健太郎(神奈川畜技セ)、酒向奈都美(栃木畜酪研)
  • 発表論文等:菅野ら(2015)日本草地学会誌、61(3):202-207