木材由来セロオリゴ糖給与は離乳期の黒毛和種放牧子牛の発育を向上させる
要約
木材由来セロオリゴ糖を離乳前1か月から放牧子牛に給与すると日増体量および飼料効率が向上する。セロオリゴ糖給与は放牧地を利用した肉用種子牛生産にとって有効な発育向上技術である。
- キーワード:放牧、黒毛和種、子牛、機能性飼料、セロオリゴ糖
- 担当:自給飼料生産・利用・公共牧場高度利用
- 代表連絡先:電話029-838-8647
- 研究所名:畜産草地研究所・草地管理研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
繁殖農家の減少から将来の肉用牛生産が不安視されるなかで、公共牧場や耕作放棄地等の放牧地を活用した子牛増産への期待が高い。一方、分娩後は親牛の発情回帰のため離乳するのが一般的であるが、その際の離乳ストレスは特に放牧下において著しく子牛の発育を阻害する問題がある。2011年度研究成果情報「木材由来セロオリゴ糖は乳用育成子牛の発育を向上させる」により、セロオリゴ糖が離乳期の乳用種育成子牛において発育向上機能を持つことが報告されている。本研究ではそれを応用し、放牧地での子牛生産を想定したセロオリゴ糖の給与技術を確立する。
成果の内容・特徴
- 親とともに放牧されている黒毛和種子牛に対して2か月齢から配合飼料給与を開始し、3か月齢で完全に離乳する。3~4月に分娩された黒毛和種雌子牛10頭を6~7月に離乳し、離乳後はケンタッキーブルーグラス優占草地84アールにて放牧する。配合飼料は日量0.5 kg/頭から漸増し3か月齢以降は日量2.0 kg/頭を給与する。セロオリゴ糖は日量10 g/頭を配合飼料に振りかけて給与する(図1、2)。離乳後は親牛と子牛を分離して放牧する。
- 離乳1か月前の2か月齢からセロオリゴ糖を給与した場合、セロオリゴ糖無給与の子牛に比べ日増体量(DG)および飼料効率が向上する(表1)。なお離乳前給与ありの子牛のセロオリゴ糖総摂取量は1頭あたり約1.2 kgである。
- セロオリゴ糖は吸湿性がほとんどなく温度、pHの変化にも安定なため、保存性・ハンドリング性に優れている。放牧地での給与に際しても、極少量を使用するため給与時の作業の増加はほとんどない。
成果の活用面・留意点
- 放牧地を利用して子牛を育成しようとする生産者にとって有用な情報である。
- 当成果について技術マニュアルを作成し、冊子体として発行した。
具体的データ
![](../../../files/nilgs15_s06_1.png)
その他
- 中課題名:預託期間拡張を可能とする公共牧場高度利用技術の開発
- 中課題整理番号:120c4
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2013~2015年度
- 研究担当者:木戸恭子、手島茂樹、櫛引史郎、上野豊(信大)、真崎匡(家畜改良セ)
- 発表論文等:
1)Kido K. et al. (2016) Anim. Sci. J. 87(5):661-665
2)木戸ら(2015)「離乳期の放牧子牛へのセロオリゴ糖給与マニュアル2015年版」