暑熱ストレスによるブロイラーの脾臓中サイトカインmRNA発現量の変動

要約

暑熱ストレスはブロイラーにおいて飼料摂取量の低下に起因せず、脾臓の萎縮を引き起こす。このとき、脾臓中のサイトカインmRNA発現量は変動し、特にインターロイキン12mRNA発現量は飼料摂取量の低下に起因せず増加する。

  • キーワード:暑熱ストレス、ニワトリ、サイトカイン、生体防御機構、脾臓萎縮
  • 担当:自給飼料生産・利用・高機能飼料
  • 代表連絡先:電話029-838-8647
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

暑熱ストレスはブロイラーにおいて、生産性とともに生体防御機構、つまり健全性を低下させる。これまで、暑熱ストレスのブロイラー生体防御機構への影響として脾臓、ファブリキュウス嚢などの免疫担当器官の萎縮が起きることは知られているが、その機能の変化については、詳細に検討されていない。また、暑熱環境下ではブロイラーの飼料摂取量は低下するが、その低下と暑熱ストレスによる免疫応答器官の萎縮および機能変化との関連性については、ほとんど知られていない。
そこで、本研究では、暑熱ストレスのブロイラーの生体防御機構への影響を、脾臓中サイトカイン発現量の変動を解析することにより明らかにし、さらにその変動と飼料摂取量低下の関連性について検討する。

成果の内容・特徴

  • 26日齢のブロイラーを適温区(24°C)、暑熱区(34°C)、ペアフィーディング区(暑熱区と飼料摂取量を同等にした24°Cにおける制限給餌区;前日の暑熱区の飼料摂取量を1日2回に分けて給与)の3区に分け、試験開始後14日目、浅胸筋、腹腔内脂肪および脾臓を採取し、その重量変化を調べる。更に脾臓中サイトカイン(インターロイキン4、12、インターフェロンγ)のmRNA発現量を測定する。
  • 暑熱ストレスにより増体量および飼料摂取量が低下し、飼料効率は、飼料摂取量の低下に起因する以上に低下する(表1)。
  • 体重あたりの浅胸筋重量および腹腔内脂肪重量は暑熱ストレスにより変化しないが、脾臓重量は、飼料摂取量の低下に起因せず低下する(表2)。
  • 脾臓中インターロイキン4発現量は、暑熱ストレスにより増加し、その増加は一部、飼料摂取量の低下に起因する。暑熱ストレスにより、脾臓中のインターロイキン12発現量は増加し、インターフェロンγ発現量は低下するが、その変動は飼料摂取量の低下に起因しない(図1)。
  • 以上のように、ブロイラーにおいて、暑熱ストレスは、飼料摂取量の低下に起因せずに脾臓萎縮を引き起こし、サイトカイン、特にインターロイキン12 mRNA発現量を変動させる。

成果の活用面・留意点

  • 1. 暑熱ストレスのブロイラーの生体防御機構への影響を、飼料摂取量低下の影響を含めて検討した、栄養による暑熱ストレス対策技術開発のための基礎的知見である。
  • 1. 本研究成果は、暑熱暴露を継続的に14日間行い得たものであり、暑熱環境下における夜間の気温低下の影響は加味されていない。

具体的データ

その他

  • 中課題名:国内飼料資源を活用した高機能飼料の調製利用技術の開発
  • 中課題整理番号:120c7
  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2008~2015年度
  • 研究担当者:大津晴彦、山崎信、村上斉、阿部啓之
  • 発表論文等:Ohtsu H. et al. (2015) J. Poult. Sci. 52(4):282-287