乳酸菌添加は施肥の異なる茎葉型飼料イネサイレージの発酵品質を改善する

要約

茎葉型飼料イネ「リーフスター」の無添加サイレージは、窒素の施用により粗タンパク質含量が増加し、酪酸発酵により発酵品質が低下する。乳酸菌の添加は、窒素施肥12kg/10a、堆肥2t/10aの施用量までは乳酸発酵を促進して、発酵品質を向上させる。

  • キーワード:飼料イネ、サイレージ、施肥、乳酸菌、発酵品質
  • 担当:自給飼料生産・利用・高機能飼料
  • 代表連絡先:電話029-838-8647
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

飼料イネの栽培では低コスト・多収を目指す必要があり、適切な施肥管理が求められる。また耕畜連携の観点からも、積極的に家畜糞堆肥が利用される。しかし、一般に窒素施肥の増加は、飼料イネサイレージの発酵品質を低下することが報告されている。
本研究では、異なる窒素・堆肥施肥水準で栽培した茎葉型の飼料イネ「リーフスター」のサイレージ発酵品質と、さらに乳酸菌を添加する場合の発酵品質の改善効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 飼料イネは茎葉型の専用品種「リーフスター」を用いる。窒素肥料の施用は10aあたり0、12、24kg(0N、12N、24N)、堆肥の施用は10aあたり0、2、6tの3水準とし、組み合わせにより9試験区を設ける。
  • 異なる施肥条件で栽培された「リーフスター」の黄熟期の飼料成分は表1の通りである。乾物率は35~45%とサイレージ調製に適した範囲であるが、サイレージ発酵の基質となる単少糖含量は3.58~6.02%と低い。
  • 飼料イネ「リーフスター」材料草には、不良発酵の原因となる好気性細菌やバチルスだけでなく、大腸菌群の付着も多い(表2)。大腸菌群は乳酸菌と栄養分の利用で競合するため、サイレージ調製の際は乳酸菌を添加し、材料草の少ない単少糖類を有効に活用する必要がある。
  • 無添加サイレージでは、窒素施肥量の増加により乾物率は低下し、揮発性塩基態窒素(VBN)生成量が増加することで、サイレージpHの低下が緩慢となる。pHが4.2以下に下がらない試験区では酪酸発酵が起こり、低品質のサイレージとなる(表3)。
  • 乳酸菌の添加は乳酸発酵を促進して、VBN生成量が減少することで、サイレージpHは低下する。pHが4.2以下となった試験区のサイレージでは酪酸発酵が抑制され、サイレージ発酵品質が改善する(表3)。
  • 飼料イネ栽培で推奨される年間窒素施肥9~10kg/10aおよび堆肥2t/10aを上回る施肥水準の試験区(12N-6tおよび24N-0~6t)では、乳酸菌添加による発酵品質の改善が認められない。

成果の活用面・留意点

  • 飼料イネ材料草は地上部約10cmの高さにおいて手で刈り取り、2~3cmに細切して、小規模発酵試験(パウチ)法により検討した結果である。乳酸菌は、飼料イネサイレージ調製用乳酸菌「畜草1号」を用いる。
  • 「畜草1号」の効果的な利用例の1つとして、参考可能である。

具体的データ

その他

  • 中課題名:国内飼料資源を活用した高機能飼料の調製利用技術の開発
  • 中課題整理番号:120c7
  • 予算区分:交付金、委託プロ(えさ)
  • 研究期間:2006~2015年度
  • 研究担当者:守谷直子、蔡義民、草佳那子、石川哲也、石田元彦、吉田宣夫
  • 発表論文等:守谷ら(2015)日草誌、61(2):67-73