インプリンティング効果を考慮したゲノム情報に基づく遺伝的能力評価法の開発

要約

遺伝子型値ベースおよび配偶子ベースにおいてインプリンティング効果を考慮するために開発した2つのゲノミックBLUP法は、全遺伝能力およびその分散成分の推定精度を向上させる。

  • キーワード:ゲノム情報、インプリンティング効果、遺伝的能力評価、推定精度
  • 担当:家畜生産・家畜育種
  • 代表連絡先:電話029-838-8647
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜育種繁殖研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ゲノム上に存在する数万規模の1塩基多型(SNP)マーカーを用いて、家畜の遺伝的能力を評価するゲノミックBLUP(GBLUP)法が乳牛を中心に実用化されつつある。これまで豚の増体や牛の肉質等においてインプリンティング効果の関与が報告されているが、GBLUP法ではインプリンティング効果を考慮することができない。そこで、インプリンティング効果を考慮した新たなGBLUP法を開発する。

成果の内容・特徴

  • シミュレーションでは、SNPマーカー数および量的遺伝子座(QTL)数をそれぞれ10,000個および200個とする。200個のQTLのうち、60個がインプリンティングによって遺伝子が一部または完全に不活性化するものとする。
  • GBLUP-I1法では遺伝子型値ベースで、GBLUP-I2法では配偶子ベースで全遺伝分散をそれぞれ3つの分散成分に分けて推定する。
  • インプリンティングによる遺伝子不活性化の程度が大きいほど、2つのGBLUP-I法の全遺伝能力の推定精度はGBLUP法のそれよりも高くなる(表1)。特に、GBLUP-I1法では、遺伝子不活性化の程度に関わらず、GBLUP法よりも正確に分散成分および全遺伝能力を推定できる。
  • 不活性化する遺伝子の由来はGBLUP-I1法の推定性能には影響しない(表2)。

成果の活用面・留意点

  • インプリンティングによる遺伝子不活性化の程度が小さい、あるいは不活性化する遺伝子の由来が片親に偏っていない場合には、GBLUP-I2法よりもGBLUP-I1法を用いるのが望ましい。
  • 育種価とインプリンティング効果の間に共分散が存在するため、2つのGBLUP-I法では育種価とインプリンティング効果を分離して推定することはできない。

具体的データ

その他

  • 中課題名:繁殖性及び生涯生産性等に対する効率的な家畜育種技術の開発
  • 中課題整理番号:130a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2013~2015年度
  • 研究担当者:西尾元秀、佐藤正寛
  • 発表論文等:Nishio M. and Satoh M. (2015) Genet. Sel. Evol. 47: 32