イネホールクロップサイレージを給与した乾乳牛の維持に要する代謝エネルギー

要約

イネホールクロップサイレージを給与した乾乳牛の維持に要する代謝エネルギーは121.6kcal・kgBW-0.75/dayであり、日本飼養標準・乳牛(2006年版)に示されている乾乳牛の維持に要する代謝エネルギー値(116.2 kcal・kgBW-0.75/day)と同等である。

  • キーワード:イネホールクロップサイレージ、乳牛、エネルギー代謝、維持エネルギー要求量、日本飼養標準
  • 担当:家畜生産・代謝制御
  • 代表連絡先:電話029-838-8647
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

水田利活用と自給飼料確保の観点からイネの飼料利用がおこなわれている。イネの化学成分や消化率に関する研究は多くなされているが、乳牛のエネルギー要求量に及ぼす影響についての検討はほとんどない。そこでイネホールクロップサイレージを給与した乳牛の維持に要する代謝エネルギー量を明らかにし、現行の飼養標準に示されている乳牛の維持に要する代謝エネルギーとの差異について検証する。

成果の内容・特徴

  • ホルスタイン種非妊娠乾乳牛(体重623±51kg、供試時年齢5.0±2.4歳(平均:標準偏差))のべ37頭を温度20℃、相対湿度60%に保たれた環境調節室に収容し、品種、熟期および収穫調製方法の異なるイネホールクロップサイレージ(表1)を維持量程度1~2週間にわたり給与する。
  • 引き続き、供試牛を開放型呼吸試験装置のチャンバー内に収容しエネルギー代謝試験を実施する(消化試験5日間、呼吸試験3日間)。得られたエネルギー代謝データより、代謝エネルギー摂取量(MEI)に対する蓄積エネルギー(RE)の回帰式を作成する(図1)。
  • 作成した回帰式に蓄積エネルギーが0となる代謝エネルギー摂取量を求めることにより、維持に要する代謝エネルギーすなわち121.6kcal・kgBW-0.75/dayが得られる。
  • 文献値(橋爪ら1964. 乳牛の飼養標準に関する研究. II.乳牛の維持養分要求量に関する研究. 畜産試験場特別報告 2, p7-77)も同様に回帰式を求め(図1)、両データについて共分散分析をおこなうと、有意な差がないことが認められる。

成果の活用面・留意点

  • 飼養標準作成の基礎資料となる。
  • 乳牛の飼料としてイネホールクロップサイレージを混合する場合の参考となる。
  • 今回得られた値は、供試イネホールクロップサイレージをほぼ単味で給与した場合の代謝エネルギー要求量と、牧乾草、稲わらを単味あるいは混合給与、またはこれらに濃厚飼料を25%程度混合して給与した場合の文献値との比較結果に基づくものである。

具体的データ

その他

  • 中課題名:家畜の生産効率と健全性の安定的両立を可能にする飼養管理技術の開発
  • 中課題整理番号:130d0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2015年度
  • 研究担当者:樋口浩二、田鎖直澄、野中最子、田島清、都丸友久(群馬畜試)、
  • 発表論文等:樋口ら(2015)日本畜産学会報、86(2):169-177