コメのアミロース含量に影響を及ぼす酵素の活性

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要約

穂上の着生位置や登熟期の温度条件により米粒中のアミロース含有率が変動するのは、デンプン合成関連酵素のバランスに原因がある。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・栽培生理研究室
  • 連絡先:0187-66-1221
  • 部会名:水稲
  • 専門:生理
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

炊飯米の粘りに影響を及ぼす胚乳デンプン中のアミロース含有率は、 籾の穂上における着生位置(堀内1991)、 登熟期の温度(檜作1969)によって変動する。 本研究はアミロース含量率の変動の機構を デンプン合成関連酵素の活性の比較から解明し、 コメの品質に関わる研究の推進に資する。

成果の内容・特徴

  • ジャポニカ系統「奥羽316号」のアミロース含有率は、強勢穎果で高く、弱性穎果で低い (図1) 。
  • アミロース含有率が低い弱性穎果では、アミロース合成に関与する結合型デンプン合成酵素(BSS)の活性が他の酵素に比べ特に低い (図2) 。
  • 登熟期の低温処理(15度C恒温)により、 「あきたこまち」のアミロース含有率は25度C処理よりも約5%上昇する。 15度Cで登熟した場合の結合型デンプン合成酵素(BSS)の活性は 他の酵素より相対的に高くなる傾向を示す (図3、図4) 。
  • 以上から胚乳デンプン中のアミロース含量の変動は、 結合型デンプン合成酵素の活性と、 デンプンのもう一つの成分であるアミロペクチン合成(QE、SSS)や、 デンプン合成全体に関わる酵素(SUS、ADPP) の活性とのバランスに基づいて生じると判断する。

成果の活用面・留意点

  • コメの品質改良を目指したデンプン合成機構に関する生化学的基礎研究、 コメの登熟の機構解明の基礎資料となる。
  • 登熟期間の温度によってアミロース含有率が変化する現象は、 一般的にジャポニカ品種に特有で、 インディカ品種には見られないと言う既知の知見がある。

具体的データ

図1 分析に用いた穎果の穂上の位置

図2 強勢穎果に対する弱勢穎果の酵素活性の比率

図3 25°C登熟に対する15°C登熟の酵素活性の最大値の比率 図4 登熟温度が可溶型および結合型デンプン合成酵素活性に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:光合成産物の蓄積・転流が食味に及ぼす影響評価(平成3年)
                     イネ胚乳のデンプン代謝機能とデンプンの性状、食味との解析研究
                      (平成4年)
  • 予算区分 :重点基礎
  • 研究期間 :平成6年度(平成3年~4年)
  • 発表論文等:Effect of grain location on the panicle on activities involved
                      in starch synthesis in rice endosperm, Phytochemistry, 36・4,
                      (843-847), 1994.
                     Effects of low temperature at the ripening period on amylose
                     content and activities of enzymes associated with carbohydrate
                     metabolism in rice endosperm, XV International Botanical Con-
                     gress abstracts, (402) 1993.