切除茎を用いた稲の簡易交配法

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要約

交配当日に母本を圃場より採取する切除茎授粉法により,正常な交配種子が得られる。授粉した切除茎の管理はガラス室内で水だけの栽培でよい。この方法により,母本の準備を含めて交配作業が省力化できる。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・稲育種研究室
  • 連絡先:0187-66-2773
  • 部会名:水稲
  • 専門:育種
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

現在の稲の交配母本は,ポット栽培または圃場からポットに株上げした材料を用いるのが一般的である。しかし,この方法では交配前の母本の準備や管理に多くの労力と場所を必要とする。ここではこれらの手間を省くため,Noguchi(1936)の方法(交配前後の切除茎を定温器中で管理)を改良した切除茎授粉法を開発し,その実用性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 交配当日の朝,圃場養成の材料の中から開化前の交配適期の穂を選び,節間より切り取る。切除する位置は第III節間がよい(表1)。切除茎は直ちに水に挿す。
  • 葉は半分程度残して切り取る。温湯除雄(43°C,7分間)後,開化した穎花だけを残し,未開花のものを切除する。各作業は切除茎を水から出した状態で行って構わない。作業の合間,作業後は水に挿しておく。
  • 授粉終了後,止葉とともに穂にパラフィン袋をかぶせ,切除茎は節を残すように(数日後,ここから発根してくる)水切を行い,ガラス室内で管理する。約30日後に交配種子が得られる。なお,栽培は水だけで十分である。水は汚れたら(10日おきくらい)交換する。水耕液(1/2春日井液)を用いると種子重がやや増大するが,稔実率,発芽率に差はみられない。
  • 交配直後にインドール酢酸(IAA)10ppm溶液に4日間浸けると節からの発根が促進される。しかし,稔実率は変わらない(表2)。
  • この切除茎授粉法の交配成功率をポットに株上げする従来法と比較すると,稔実率が低下する場合もあるが,正常な交配種子は得られる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 本法では交配当日に母本と父本を一緒に採取でき,また一連の交配作業はポット単位ではなく切除茎単位で行えるので,従来法よりも手間がかからない。
  • したがって,本法は多数の異なる組合せの交配を行う場合や,同一の父本で複数の交配を行う場合には特に有効である。
  • 授粉後の切除茎は発根するまでの3~5日間は特に乾燥に弱いので,ガラス室内での管理(直射日光を避ける,適当な湿度を保つ)には注意を要する。

具体的データ

表1 切除位置の違いによる交配成功率の比較

表2 インドール酢酸処理による交配成功率の比較

表3 従来法と切除茎授粉法の交配成功率の比較

その他

  • 研究課題名:いもち病抵抗性品種の育成
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成4~6年)
  • 発表論文等:切除茎授粉によるイネの簡易交配法,
                              育種学雑誌,45巻1号,123-125,1995。
                      切除茎授粉によるイネ交配法の諸条件の検討,
                             育種学雑誌,45巻別冊1号,313,1995。