イネ稲こうじ病圃場抵抗性(量的抵抗性)のダイアレル分析による遺伝分析

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要約

稲こうじ病に対する圃場抵抗性(量的抵抗性)の異なる水稲6品種の総当り交配によるF1種子の抵抗性検定結果をダイアレル分析したところ,遺伝子の相加的効果が認められ,このことから抵抗性遺伝子の集積による抵抗性品種育成の可能性が示された。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・水田病害研究室
  • 連絡先:0187-66-2772
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

近年東北地方においてイネ稲こうじ病多発年が頻発し,収量のみでなく品質にも悪影響を与え,大きな問題となっている。環境問題や低コスト化の観点から本病の防除には品種抵抗性の利用が有効と考えられるが,それに関する知見は極めて少ない。そこで,本病に対する高度圃場抵抗性品種育成の第一歩として圃場抵抗性(量的抵抗性)の遺伝様式の解明を行う。なお,ダイアレル分析とは,量的形質の統計遺伝学的解析により親の遺伝情報を交配した次の世代で得る手法である。

成果の内容・特徴

  • 交配親として抵抗性の異なる水稲6品種(「アキニシキ」,「蟾津」,「ヤマホウシ」,「愛知旭」,「とりで1号」及び「中国108号」)を用い,総当り交配を行いF1系統を得た。
  • F1系統の圃場における抵抗性検定結果を発病穂率で示した(表1)。本年はイネの生育期間中の気象が異常高温であったため発病に与える出穂期の影響が大きくなった。その影響を除くため出穂期と発病穂率の回帰式を求め,発病穂率の回帰曲線からの偏差に定数を加えたものを発病度として分析に供した(図1)。
  • パソコンプログラム「DIALL」(鵜飼,1989)を用い,抵抗性遺伝子についてダイアレル分析を行った。
  • Hayman(1954)の方法による分散分析の結果,抵抗性遺伝子の相加的効果が有意に認められた。特定の組み合わせでは優性効果が認められた(表2)。また平均的な正逆交配間差,すなわち母系統の細胞質に由来する遺伝的効果は有意に認められなかった。抵抗性の遺伝率は低く,本病抵抗性は環境要因の影響を受けやすいとみられるが,抵抗性遺伝子の集積は十分可能と考えられた(表3)。

成果の活用面・留意点

抵抗性遺伝子の相加効果が認められたものの遺伝率は比較的低いことがあると推定される。このためより有効な圃場抵抗性(量的抵抗性)を有する品種・系統を探索する必要がある。

具体的データ

表1 F1系統の圃場における発病穂率と発病度

図1 平均発病穂率と出穂日の関係

表2 稲こうじ病圃場抵抗性検定の分散分析

表3 ダイアレル分析による遺伝値

その他

  • 研究課題名:イネ稲こうじ病圃場抵抗性のダイアレル分析による遺伝様式の解明
  • 予算区分 :重点基礎
  • 研究期間 :平成6年度(平成6年度)
  • 発表論文等:なし