Cylindrocladium floridanum によるソラマメ黒根病(新病害)の発生

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要約

春播ソラマメに発生した急性落葉症状はCylindrocladium floridanumによる土壌伝染性病害であることが明らかとなり、ソラマメ黒根病と命名した。本病は、育苗土汚染・圃場土汚染何れでも発病する。

  • 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・病害生態研究室
  • 連絡先:0196-43-3465
  • 部会名:やませ環境、生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:豆類
  • 分類:研究

背景・ねらい

近年、東北各地で冷涼な気候を利用して産地化されている春播ソラマメに発生した 急性落葉症状の病原と発生源を明らかにする。

成果の内容・特徴

1991年に発生したソラマメの急性落葉症状はCylindrocladium floridanum によるものであった。 我が国ではソラマメの病害としては記載がない新病害であることが明らかとなり、 ソラマメ黒根病と命名した。

  • 発生状況
    現在のところ、 東北農試内・種市町・軽米町の現地試験圃場で発生が認められている。
  • 病徴
    地上部の症状は、開花後子実が膨らみ始める頃、 下葉より黄化が始まりやがて全体が黄化し、落葉する。 この間およそ1週間程度である。まれに、萎ちょう症状を伴うことがある。 地下部の症状は、地上部に症状が現れる以前より、細根の黒変・腐敗に始まり やがて、根系全体に被害部が広がり、枝根の腐敗脱落が起こる。 黒変した根の細胞中には微小菌核が多数形成される。 地上部の症状が認められるときには既に地下部のほぼ50%以上が損傷を受けている。 (図)
  • 病原の同定および病原性の確認
    被害株より分離した病原菌は しょ糖加用ジャガイモ煎汁寒天培地で白色の菌そうを示し、 培地中に多数の褐色の微小菌核を形成する。 分生胞子・膨状細胞(vesicle)の形態等より Cylindrocladium floridanum Sobers et Seymourと同定した(表)。 同菌の接種試験により、病原性が確認された。
  • 伝染経路
    本病原による育苗土および圃場土何れの汚染によっても発病する。

成果の活用面・留意点

病原が同定されたことで、診断・防除法の開発に役立つ。 また、伝染経路が明らかになったことにより被害の拡大防止に役立つ。 本病の症状は、インゲンマメ黄斑モザイクウイルスによるモザイク病に似ているが、 症状が下葉から現れること、茎葉やさやに壊死斑を生じないなどの点 および地下部症状の有無により区別できる。 また、ポリマルチにより発病が助長されることがある。

具体的データ

図 ソラマメ黒根病の病勢進展

表 Cylindrocladium floridanumと分離菌との形態の比較

その他

  • 研究課題名:ソラマメの急性落葉症状の病原と発生条件の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成3年~平成6年)
  • 発表論文等:Cylindrocladium floridanumによるソラマメ黒根病(新称)
                            日本植物病理学会報58巻4号、1992
                       ソラマメ黒根病(仮称)の病勢進展に影響を及ぼす要因について
                            日本植物病理学会報59巻6号、1993