アンモニア処理による麦ワラ繊維の構造変化と消化性向上のメカニズム

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要約

麦ワラをアンモニア処理すると,繊維中の架橋結合の解裂によりリグニン-フェルラ酸複合体が遊離するため,繊維の多糖が酵素分解を受けやすくなり,消化性が向上するメカニズムを明らかにした。

  • 担当:東北農業試験場・草地部・飼料調製研究室
  • 連絡先:0196-43-3564
  • 部会名:畜産(草地)
  • 専門:動物栄養
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

ワラ類の品質および貯蔵性改善に対するアンモニア処理の有効性は すでに実証されており、その実用的な基本技術も概ね確立されているが, アンモニア処理による消化性向上のメカニズムについては未解明の部分が多い。 アンモニア処理の応用技術や,新たな品質改善技術を開発するためにも, 消化性向上のメカニズムを明らかにする必要がある。

成果の内容・特徴

アンモニア処理(添加量:30g kg-1,25度C,36日間) による麦ワラ繊維の化学構造の変化ならびに分解・消化性の変化から, アンモニア処理の作用機作を解析した。

  • アンモニア処理すると可溶性リグニン画分が 5.5g kg-1から16.8g kg-1に増加した。また,アンモニア処理麦ワラの可溶性リグニン画分には著しい量(17.4g kg-1) のフェルラ酸エーテルが含まれた(表1)。
  • 可溶性リグニンの分子量は処理ワラ,未処理ワラとも同じレベルにあった(表1)。
  • アンモニア処理により麦ワラの乾物消化率 ならびに麦ワラ繊維の酵素分解率は向上し, 酵素分解により生成される単糖の量も増加した(表2)。
  • 以上の結果およびイネ科植物細胞壁の化学構造に関する既往の知見から, 麦ワラ繊維に対するアンモニア処理の一つの作用機作は次のように推定される。 すなわち,アンモニア処理により麦ワラ繊維中の架橋結合が解裂してリグニン-フェルラ酸複合体が遊離するため, 繊維の多糖は酵素分解を受けやすくなり,消化性は向上する(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 品質改善技術の開発に有効な情報となり,また, アンモニア処理麦ワラの栄養価評価や給与技術の参考となる。
  • ケイ酸に富む稲ワラについては検討する必要がある。

具体的データ

表1アンモニア処理および未処理麦ワラから抽出した可溶性リグニン画分の収量とその性状

表2 アンモニア処理および未処理麦ワラの乾物消化率ならびに線維の酵素分解率

図1 麦ワラ線維に対するアンモニア処理の作用モデル

その他

  • 研究課題名:調製貯蔵及び消化過程における牧草繊維の理化学的特性の変化の解明と
                      その品質改善
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成2~6年)
  • 発表論文等:Kondo T., Ohshita T. and Kyuma T. (1992)
                            Comparison of characteristics of soluble lignins
                            from untreated and ammonia-treated wheat straw.
                            Animal Feed Science and Technology, 39:253-263.