異なる温度条件下でも安定したイネ胚乳アミロペクチン構造の品種問差
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要約
水稲品種金南風とIR36の胚乳デンプンのアミロペクチン鎖長には違いがみられる。この品種間差は、重合度5~12と重合度13~24の枝の比率で特徴づけられ、登熟期の温度条件が異なっても安定している。同比率で評価すると、両品種それぞれに類似した品種群が存在する。
- 担当:東北農業試験場・水田利用部・栽培生理研究所
- 連絡先:0187-66-1221
- 部会名:水稲
- 専門:栽培
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
イネ胚乳デンプンのアミロースは、米の食味関連形質として知られ、その変異系統を利用した良食味品種の育成が行われている。最近、アミロペクチン構造にも品種間差が示唆され、糊化特性、
食味等の実用形質に関与している可能性がある。しかし、
アミロペクチン構造は登熟期の温度によっても変動するため、
品種間差の存在の確定には温度制御条件下での比較が必要である。
本研究のねらいは、温度制御した条件下で登熟させたイネを用い、
アミロペクチン鎖長の遺伝的変異の存在を明確にすることである。
さらに圃場において栽培した複数の品種についても、
アミロペクチン鎖長分布特性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 同一温度で登熟した場合、金南風の胚乳アミロペクチンはIR36と比較し、
重合度6~10の短鎖を多く持ち、重合度13~22の枝が少ない
(図1)
一方、重合度24以上の長鎖の比率は、両品種間にほとんど差が認められない
(図1)
- 両品種のアミロペクチン鎖長分布の違いは、
fa画分(重合度5~12)とfb1画分(同13~24)
比率によって特徴づけることができる(
図1、
表1)。その比率は登熟期温度の変動につれ上下したが
、
変動幅は金南風が0.58~0.64、IR36は0.39~0.47と重なることはない。
このことから異なる温度条件下でも安定した、
明確な品種間差の存在することが確定された。
- 両品種と各々の糯性突然変異系統のfa/fb1比に明らかな違いは認められず、
アミロースの有無は両品種間のアミロペクチン構造の差とは関連していない
(表1)
- 圃場で栽培した複数品種の鎖長分析の結果、金南風、
IR36それぞれに類似したアミロペクチン構造を持つ品種群が存在した
(図2)。
成果の活用面・留意点
- アミロペクチン鎖長のみ異なった準同質遺伝子系統を育成し、食味、
加工適性(糯の硬化性等)との関連の解明に資する。
- いかなる代謝の変化がアミロペクチン鎖長の品種間差、
登熟温度による変化を引き起こしているかを解明する基礎データとなる。
- 他のアミロペクチン変異を検出するには、
fa/fb1比だけでなく鎖長分布全般にわたって精査する必要がある‘
具体的データ



その他
- 研究課題名:温度変動の拡大が水稲の登熟に及ぼす影響の解明
- 予算区分 :地球環境
- 研究期間 :平成10年度(平5~8年度)
- 発表論文等:Umemoto et al.;Differences in Amylopectin Structure Between Two
Rice Varieties in Relation to the Effects of Temperature During
Grain-Filling.Starch 51(1999),58-62.