こまめな施肥の水稲冷害軽滅と平年の収量確保効果

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要約

合計窒素施肥量130kg/haを基肥を含め13回に分けて施用(多数回分施)することによって、冷害年に障害型不稔率の低下をもたらすことができる。なお、平年には慣行並の収量が確保てきる。

  • 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・低温ストレス研究室
  • 連絡先:019-643-3464
  • 部会名:生産環境・やませ環境
  • 専門:土壌
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

窒素施肥量が少ないほど、 水稲の障害型不稔発生率が低下することは知られている。しかし、 施肥量が少なければ、平年における収量が少ない。そこで、 平年には慣行並の収量を維持し、 冷害年には障害型不稔発生率を低下させることのできる 窒素施肥法の開発に資するため、超多数回分施の効果を検討した。

成果の内容・特徴

  • 多数回分施の窒素施肥量は基肥l0kg、追肥120kg/haで、追肥窒素は12等分し、 移植 1週間後より毎週施用した。リン酸、 カリは慣行と同様に200kg/haを基肥施用した。 慣行窒素施肥量:50(基肥)+40(移植30日後)+40(幼穂形成期)kg/ha
  • 幼穂形成期直前に鉢上げし、 直後から出穂はじめにかけて低温処理をした水稲の不稔率は処理期間の長さに 応じ堵加するが、窒素の多数回分施によって慣行施肥より低下した (図1)。
  • 多数回分施した場合の水稲収量は慣行並であった (図2)。
  • 水稲鉢上げ時の茎葉窒素含有率は多数回分施の方がやや低いが、 収穫時には慣行より高くなった (表1)。

成果の活用面・留意点

  • 多数回分施であるため、気象変動に応じて施肥量、施肥時期、 施肥回数を適宜変更することが可能である。
  • 冷害耐性の大きい省力的施肥技術確立に役立つ。
  • 透水過多の表層多腐植質黒ボク土水田における結果であり、土壌型、透水性、 土壌管理等が異なる場合は窒素施肥量、施肥回数を変える必要がある。

具体的データ

図1 低温処理による水稲不稔率の変動

図2 圃場における水稲収量

表1 茎葉窒素含有率

その他

  • 研究課題名:土壌管理による冷害軽減・克服効果の数量的評価
  • 予算区分 :地域総合(早期警戒)
  • 研究期間 :平成10年度(平成8年~12年)
  • 発表論文等:なし