界面活性剤による水田土壌の可給態窒素量の子測法

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要約

界面活性剤であるSDS(ラウリル硫酸ナトリウム)1%溶液50mlを、湿潤水田土壌20gに加え、105度Cで2時間静置後、遠心操作(3000回転、10分)を行い、得られた抽出液を希釈して、吸光度(280nm)を求めることにより、可給態窒素量を予測することができる。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・水田土壌管理研究室
  • 連絡先:0187-66-2775
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

環境保全的・効率的管理を行っていくうえで、 水田土壌の可給態窒素量を推定することは重要なことである。 しかし、推定法としてはこれまで様々な方法が考えられてきているが、 簡便で有効なものはあまり見つかっていない。 リン酸緩衝液による抽出法が簡便なものとして良く利用されているが、 土壌の種類や有機物施用などによって値が変動しやすいなどの問題が あげられている。そこで、 可給態窒素の多くは微生物に由来するという事実に注目し、 界面活性剤を用いて菌体成分を抽出し、 可給態窒素量を推定しようと試みた。

成果の内容・特徴

  • 280nmにおける吸光度と抽出液中の窒素濃度(抽出液を過酸化水素水‐ 硫酸で分解、比色法によって測定)との間には直線関係が得られる (図1)。 この抽出方法では転換期畑土壌を含めても同じ直線上に乗ることが確認できる。
  • SDS溶液によって抽出された窒素量と湛水培養(30度C、4週間) 窒素量との間には直線関係が得られる (図2)。 この直線関係は、リン酸緩衝液の場合よりも相関が高い (図3)。
  • 抽出窒素量と窒素無施用水田の水稲の窒素吸収量との間には直線関係が 得られる (図4)。

成果の活用面・留意点

  • 界面活性剤としては、紫外部の吸収がなく、 溶解性が良いSDSが適している。
  • 抽出に用いる土壌は湿潤土とする。また、 SDS溶液の濃度が1%以下では抽出量が変動しやすい。 溶液量が少ないとSDSの析出が起き易い。温度処理も1時間以上は必要である。 抽出液には核酸様物質が含まれているので、 吸光度を求める波長は280nmが適している。
  • 振盪すると有機物施用土壌では腐植物質による着色が増加するので、 できるだけ振盪処理を避けて行う必要がある。

具体的データ

図1 SDS抽出液の吸光度と窒素濃度の関係

図2 SDS抽出量と培養窒素量の関係

図3 リン酸緩衝液抽出窒素量

図4 抽出窒素と窒素無施用の水稲の窒素吸収量の関係

その他

  • 研究課題名:水田土壌の生態的特性の解明と制御技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成6~10年度)
  • 発表論文等:界面活性剤を用いた水田土壌の可給態窒素量の推定、日土肥学会講要,44,138,1998