アゼトウガラシ属水田雑草におけるスルホニルウレア系除草剤抵抗性の迅速検定法

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要約

水田雑草のアゼナ、アメリカアゼナ、タケトアゼナ、アゼトウガラシは、若い葉を明条件で除草剤に浸せきして抽出液を比色分析することにより、スルホニルウレア系除草剤抵抗性の迅速検定が可能である。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・雑草制御研究室
  • 連絡先:0187-66-2771
  • 部会名:水稲
  • 専門:雑草
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

スルホニルウレア系除草剤に対する抵抗性生物型がアゼトウガラシ属雑草を はじめ数種類の水田雑草で出現している。 抵抗性生物型の防除には適切な防除体系が求められるが、 抵抗性生物型と感受性生物型は外見からは判別できない。 スルホニルウレア系除草剤の処理によって判別する方法では、 本剤が遅効性のため結果がでるまで一カ月以上の時間を要することから、 より短時間で簡易に判別する方法が求められている。 スルホニルウレア系除草剤抵抗性の迅速検定法については、 低抗性を短時間で視覚的に検定するという方法を、 Gerwickらが既に報告している(Rapid Diagnosis of ALS/AHAS‐Resistant Weeds. 1993. Weed Tech.7:519-524)。そこで、この迅速検定法を改変し、 日本のアゼトウガラシ属水田雑草へも適応可能な抵抗性の迅速検定法を確立する。

成果の内容・特徴

  • アゼナ、アメリカアゼナ、タケトアゼナの葉を除草剤に浸せきして、 葉内のアセト乳酸の蓄積を比色分析することによって、 スルホニルウレア系除草剤抵抗性であるかどうかを判断できる( 表1、 表2)。 既報の検定法からの主な改変点は以下の通りである。
    1.検定に使用する材料には、 若い植物(15葉期以内)の若い葉(茎頂より6枚以内の上位葉)を使用する。
    2.葉を除草剤溶液に浸して静置する環境は、 明条件(約150μmol/m2/s)とする。
    3.検定に使用する除草剤は、 水溶性が高いために取り扱いが容易であることや単剤として市販されているために 入手が容易であることから、チフェンスルフロン75%水和剤を便用する。 使用濃度は7.5または75ng a.i./mlとする。
  • アゼトウガラシの場合は、 表3 に示した葉の抽出液から夾雑物を取り除く操作を行うことで、 検定が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 抵抗性生物型の発生が疑われる水田の防除体系を決定する際に活用する。
  • 抵抗性生物型の分布などの実態調査や個体群動態などの生態学的研究に活用する。
  • 検定法の使用に際しては除草剤無処理の対照区を設け、 対照区で赤色の呈色が見られることを必ず確認する。 対照区で赤色の呈色が見られない場合は検定がうまく行われていないことを示す。
  • 上記4草種以外で既に出現が報告されている抵抗性生物型については、 迅速検定法の適用の可否を確認していないため、 その適用には更なる条件検討が必要となる。

具体的データ

表1 アゼナ、アメリアカゼナ、タケトアゼナにおけるスルホニルウレア系除草剤抵抗性生物型の迅速検定法の手順

表2 迅速検定法による比色分析結果

表3 アゼトウガラシ葉の抽出液からの夾雑物除去の手順

その他

  • 研究課題名:スルホニルウレア系除草剤抵抗性の発現機構の解明
  • 及びその簡易検定法の開発
  • 予算区分 :連携開発研究「雑草防除」
  • 研究期間 :平成10年度(平成9~11年)
  • 発表論文等:スルホニルウレア系除草剤抵抗性簡易検定法のアゼナ類への適用、
                     雑草研究、43巻別号、44~45、1998
                     スルオニルウレア系除草剤の作用機構と抵抗性ゴマノハグサ科雑草の
                     ALS活性を用いた簡易検定法、
                     農業生態系における雑草剤抵抗性雑草の拡散、
                     農業環境技術研究所、63-69、1998