食物アレルゲンに対する抗体分泌細胞ライブラリーの作製
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要約
畑作物のうち、大豆、麦、そば等は食物アレルギーの原因となることが知られている。ヒトリンパ球を不死化することで、いくつかの作物に対するヒト抗体分泌細胞を樹立し、アレルゲン解析のツールとしてのヒト抗体が提供できる。さらにこれらの抗体を用い、新しい畑作物の品質評価が可能になる。
- 担当:東北農業試験場・畑地利用部・流通利用研究室
- 連絡先:024-593-5151
- 部会名:流通・加工
- 専門:食品品質
- 対象:全般
- 分類:研究
背景・ねらい
現代人の3人に1人はアレルギーの体質を持っていると言われている.
このうち食べ物によって引き起こされるものを食物アレルギーと呼ぶ。
東北地方の主要な畑作物のである大豆等も食物アレルキーを引き起こすことがある。
アレルゲン蛋白質に対するIgE抗体が人間の体のなかで産生されることによって、
食物アレルギーを発症する素地ができる。したがって、
ヒトの抗体を用いてアレルゲン蛋白質の詳しい構造解析を行うことにより、
抗体が食物アレルゲンのどういった部分を認識しているかを知ることが、
食物アレルキー発症機構を解析する上で重要である。しかしながら現在も、
ヒト抗体を安定的に得ることは困難である。そこで本研究では、
ヒトリンパ球を不死化する技術を用い、
継続的に食物アレルゲンに対する抗体を産生する細胞株を得ることを目的とする。
成果の内容・特徴
- 健常人から得た末梢血リンパ球にエプスタイン-バールウィルスを感染させ、
2000本以上の凍結アンプルからなるB細胞(抗体産生細胞)
ライブラリーが作製できる。
- 同時にそれぞれの細胞の培養上清を保存し、
数種の食物アレルゲンに対する抗体を酵素免疫測定法で調べることにより、
どのような食物アレルゲンに対する抗体産生細胞が含まれているかを
知ることができる
(表1)。
- 大豆粗抽出液を電気泳動しメンブレンに転写後、
いくつかの培養上清を用いて認識される蛋白質をウエスタンブロッティングで
検出すると、多数の蛋白質のバンドが得られる。将来、これらの抗体を用いて、
大豆のアレルゲン性の強弱を判定できる可能性がある
(図1)。
成果の活用面・留意点
- 種々の食物アレルゲンに対する抗体産生細胞が検出された。
これらの細胞が産生する抗体を用い、
作物のアレルゲン性を予測することが可能になる。
- 本研究で作製した抗体産生細胞ライブラリーは、
種々の食物アレルゲンのみならず、
他のアレルゲン蛋白質の解析にも用いることができる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:畑作物の新しい品質評価法とその利用技術の開発
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成8~10年度
- 発表論文等:(1)Allergenicity forecast using immortalized cells,proceedings
of 3rd JIRCAS Symposium. 13-20 (1998)
(2)Preparation of human immortalized B-cells secreting
anti-bodies against food allergens, Biotechnology Techniques,
12(7) 545-547 (1998)
(3)ヒト抗体分泌細胞で探る食物アレルゲン、バイオサイエンスと
インダストリー, 56(12),33-34 (1998)