土壌伝染性糸状菌病に対する菌食性線虫の発病抑制効果
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要約
菌食性線虫のニセネグサレセンチュウ(Aphelenchus avenae)は、3種類の病原性糸状菌を餌にするとよく増殖する。本線虫の福島系統は、このうちRhizoctonia solaniによるカリフラワーの苗立枯症の発生を抑制し、生物防除に利用できる可能性がある。
- 担当:東北農業試験場・畑地利用部・畑病虫害研究室
- 連絡先:024-593-5151
- 部会名:生産環境(病害虫)
- 専門:作物病害
- 対象:花菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
ある種の土壌線虫は、植物病原性糸状菌を摂食して増殖することが知られている。
そこで、防除の対象とする土壌伝染性糸状菌を摂食して増殖する線虫の中から、
当該土壌伝染性病害の生物防除に利用できる可能性を検討する。
成果の内容・特徴
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福島県内3カ所(福島市、郡山市、会津坂下町)と青森県内1カ所(黒石市)の土壌から
採集した菌食性線虫のニセネグサレセンチュウ(Aphelenchus avenae)は、
土壌伝染性糸状菌のFusarium oxysporum f. sp. conglutinans、Pythium ultimum var.
ultimumおよびRhizoctonia solaniを餌にするとよく増殖する。しかし、
本線虫の増殖程度は同一菌を摂食しても、採集地の異なる系統間で異なる
(図1)。
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本線虫の福島系統は、ポット試験において、Rhizoctonia solani(培養型III A、
菌糸融合群AG-4)によるカリフラワーの苗立枯症に対して大きい防除効果を示す
(表1)。本線虫のいずれの系統も、
ホウレンソウ立枯病(pythium菌)およびキュウリつる割病(Fusarium菌)に対しては、
防除効果がほとんどない。
成果の活用面・留意点
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菌食性線虫:'ニセネグサレセンチュウは、
土壌伝染性糸状菌:Rhizoctonia菌による病害の生物防除資材として有望である。
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同一の糸状菌のみで本線虫を継代培養すると増殖力が低下するので、
線虫の維持に当たっては種類の異なる糸状菌を交互に餌として与える。
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Rhizoctonia solaniでも培養型や菌糸融合群が異なると、
本線虫による防除効果は異なる可能性がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:土壌伝染性糸状菌病に対する菌食性線虫の抑制能力の評価
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成10年(平成7年~10年)
- 発表論文等:1) Propagation of two fungivorus nematodes on four species of
plant pathogenic fungi, Japanese Journal of Nematology, 25巻1号,
1995. 2) 野菜の苗立枯病に対する菌食性線虫の抑制効果,
北日本病害虫研究会報, 46号, 1995.