ハクサイ根こぶ病の発病に関与する抑止土壌の生物性・非生物性

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要約

ハクサイ根こぶ病に対して淡色黒ボク土は普通黒ボク土より抑止的であり、その抑止要因として生物的要因と非生物的要因がともに関与している。

  • 担当:東北農業試験場・総合研究部・総合研究第3チーム
  • 連絡先:024-593-5151
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:葉菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

アブラナ科野菜根こぶ病では、 発病しにくい土壌(発病抑止土壌)がいくつか知られている。 これらの土壌の抑止性が土壌中の微生物などの生物的要因であることを示唆する例と、 物理・化学的な非生物的要因によるとする例が報告されているが、 同一土壌で両要因について検討した例はない。しかし、 このような土壌を本病防除に利用する場合、 抑止性がいずれの要因によるものか把握しておく必要がある。そこで、 東北農試(福島市)にある淡色黒ボク土と普通(腐植質) 黒ボク土の発病抑止程度を比較し、 その内の抑止的な土壌における抑止要因を検討する。

成果の内容・特徴

  • 東北農試(福島市)圃場の淡色黒ボク土は、 同地の普通黒ボク土に比べハクサイ根こぶ病に抑止的である (図1)。
  • 淡色黒ボク土を蒸気殺菌(100度C,1時間)し、 元の生物活性を失活させてから病原菌を高い菌密度(106/g土壌) で接種した場合、無殺菌土壌の発病抑止性は見かけ上消える (図2)。このことから、 土壌の生物的要因が発病抑止に関与していると言える。
  • 同様に殺菌後に低い菌密度(104/g土壌)で病原菌を接種した場合、 両土壌とも無殺菌時の発病程度より高くなるが、 淡色黒ボク土の方がなお発病抑止的である(図2)。 このことから、生物的要因以外の要因も発病抑止に関与していると言える。
  • 普通黒ボク土に無殺菌の淡色黒ボク土を混合すると、病原菌密度が高い条件 (106/g土壌)でも淡色黒ボク土の発病抑止効果を移すことができる (図3)。
  • 淡色黒ボク土の発病抑止性には生物的要因も非生物的要因も関与しており、 他の土壌に混合して発病抑止的にさせることも可能である。

成果の活用面・留意点

  • 本淡色黒ボク土を発病抑止土壌としてセル育苗で有効利用する際に 発病抑止性を維持するための基礎資料となる。
  • 本試験結果は東北農試(福島市)圃場から採取した土壌で得られた成果であり、 同一土壌群でも、他地域の土壌を用いる場合には検討が必要である。

具体的データ

図1 各種土壌における根こぶ病菌密度と発病の関係

図2 ハクサイ根こぶ病の発病に及ぼす土壌殺菌の影響

図3 ハクサイ根こぶ病汚染土壌に殺菌あるいは非殺菌発病抑止土壌を混合した際の発病抑止効果

その他

  • 研究課題名:有機質資材および耕種的技術による野菜の土壌病害回避技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成9~13年
  • 発表論文等:1. Factors associated with the suppressiveness of soil to clubroot
                      disease of Chinese cabbage. Abstracts of 1997 annual meetings of
                      American Society of Agronomy, Crop Science Society of America and
                      Soil Science Society of America. 1997.