多肥条件下でも硝酸態窒素の蓄積が少ないリードカナリーグラス
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要約
施肥量が多くなると,リードカナリーグラスはオーチャードグラスと比べて全窒素濃度の増加は大きいが,硝酸態窒素濃度の増加は小さい。リードカナリーグラスの硝酸態窒素濃度は窒素施肥量で10aあたり10kgの場合でも微量である。
- 担当:東北農業試験場・草地部・飼料作物研究室
- 連絡先:019-643-3563
- 部会名:畜産(草地)
- 専門:栽培
- 対象:牧草類
- 分類:指導
背景・ねらい
オーチャードグラス等の寒地型イネ科牧草に対する施肥量の上限は,
牧草中の硝酸態窒素を考慮した場合,一回の刈取毎に窒素施肥量で10aあたり10kgと
考えられている。東北地域では施肥反応性に優れているリードカナリーグラスは
過剰な土壌窒素条件下でも栽培が期待されるが,硝酸態窒素蓄積については
十分検討されていない。そこで多肥条件下でリードカナリーグラスと
オーチャードグラスの全窒素濃度と硝酸態窒素濃度の変化を比較する。
成果の内容・特徴
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5月中旬から30日毎の4回の刈取りで刈取り毎に追肥(窒素成分)3~20kg/10aを行い,
施肥量の増加に伴うリードカナリーグラス「ベンチャー」とオーチャードグラス
「キクミドリ」の生育の差異,とくに全窒素濃度と硝酸態窒素濃度の変化を
ポット試験により比較した。施肥量の増加に伴う地上部乾物重の増加は
リードカナリーグラスが,オーチヤードグラスよりも上回る傾向が伺われる
(表1)。
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施肥量の増加に伴い,試験期間中の全窒素吸収量はリードカナリーグラスでは7.8から
23.1g/平方メートルへ大きく増大するが,オーチャードグラスでは
5.8~14.3g/平方メートルへ増大する程度であった。一方,
試験期間中の硝酸態窒素蓄積量は両牧草種とも施肥量の増加に伴い増大するが,
施肥量が3~10kg/10aの場合,リードカナリーグラスの硝酸態窒素蓄積量は小さい。
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茎部の全窒素濃度は施肥量に関わらずリードカナリーグラスとオーチャードグラスは
大差が認められないが,葉部の全窒素濃度は施肥量の増加ともに
リードカナリーグラスでは増大する(図1)。
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硝酸態窒素濃度はリードカナリーグラスでは施肥量で
20kg/10a相当では葉部と茎部ともにオーチャードグラスと同レベルであるが,
施肥量で15kg/10a以下ではオーチャードグラスに比べて低い
(図1)。
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以上のことからリードカナリーグラスは窒素施肥量に対してオーチャードグラスより
窒素吸収量が多いにもかかわらず硝酸態窒素蓄積量が少なく,
家ふん糞尿等の施用による窒素施肥量の多い草地の牧草種に適していると考える。
成果の活用面・留意点
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ドカナリーグラスはオーチャードグラスと比べ硝酸態窒素の蓄積が小さいことから
環境保全型草種として広い範囲での利用が期待される。
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栽培環境によって硝酸態窒素蓄積の反応は変化することに留意する必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:リードカナリーグラスの環境保全機能等の解明と高嗜好性育種素材の開発
- 予算区分 :総合的開発(新用途畑作物)
- 研究期間 :平成10年度(平成8~10年)
- 発表論文等:1. Nutrient Uptake Ability of Phalaris arundinacea L. and Dactylis
glomerate L. 88th Annual Meeting of
ASA-Environmental Quality.
Agronomy Abstracts: p 25(1996)
2. The effect of severity of cutting top on the nutrient uptake
ability of Phalaris arundinacea L. and Dactylis glomerate L.
89th Annual Meeting of ASA-Environmental Quality. Agronomy
Abstracts: p 30(1997)
3. リードカナリーグラスの塩類吸収特性
異なる施肥量に対するリードカナリーグラスとオーチャードグラスの
硝酸態窒素蓄積の比較 日本草地学会誌 44(別):pp22-23(1998)