パーコールを用いた牛凍結精子の効率的な生存分離方法

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要約

牛凍結融解精子を45%および90%のパーコールを用いて遠心分離すると、90%パーコール層の下部から効率的に生存・正常先体付着精子が回収できる。

  • 担当:東北農業試験場・畜産部・家畜繁殖研究室
  • 連絡先:019-643-3542
  • 部会名:畜産(家畜)
  • 専門:繁殖
  • 対象:家畜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

1985年に畜産試験場で年末成熟卵の体外成熟・受精による子牛が生まれて以来、 世界的に牛の体外受精に関する研究がなされている。しかし、 現行の精子処理方法では、全ての精子が卵子に侵入可能とは限らず、 優良種雄牛の精子が体外受精に使えない場合がある。その主な原因として、 精子の凍結融解後の生存性・運動性の低下があげられる。そこで、本研究では、 どの種雄牛の精子にも有効で、 しかも高い正常受精率が得られる体外受精系の開発を目的に、 先体が正常な生存精子を効率杓に回収できる精子の処理方法を開発する。

 

成果の内容・特徴

  • 牛K、M、ならびにAの凍結精子を実験に用いた。それぞれの凍結精子を融解・洗浄後、 修正TALP液で希釈し、無処理区(W区:対照区)及びパーコール区に分け、 パーコール区を90%-45%パーコール層の上層に重層した。ついで、 遠心分離(700g×15分)後に、90%パーコール層の下部及び45%パーコール層と 90%バーコール層の間から得られた分画を、それぞれ90区及び45区とし (図1)、さらに、生理食塩水で洗浄した。 洗浄後に、各区の精子の運動性を加温した精子活力検査盤を用いて観察し、ついで、 精子をトリプルステイン染色(図3)した。
  • どの種雄牛の精子についてもW区と比較して90区の運動精子率 (図2)、生存精子率及び正常先体付着精子の割合 (図4)が有意に高くなった。以上のことから、 パーコール法により正常な細胞膜を有する生存精子を 効率的に分離できることが示された。

成果の活用面・留意点

    本研究で使用した種雄牛は3頭と少ないので、 さらに多くの種成年精子について検査する必要がある。しかし、 凍結融解後の生存性が極端に低下する種雄牛精子の場合、 このパーコール法を使用すると、生存精子が効率的に得られ、 体外受精率の向上が期待できる可能性が示された。

具体的データ

図1 遠心分離後の状態

図2 遠心分離後の各区の運動精子率

図3 トリプルステイン染色による判定基準

図4 トリプルステイン染色による牛精子の生存性及び先体の有無の判定結果

その他

  • 研究課題名:体外受精における正常受精率向上技術の開発
  • 予算区分 :総合的開発(繁殖技術)
  • 研究期間 :平成7年度(平成7~9年)
  • 発表論文等:Assessment of bull spermatozoa separated by percoll. The 13th
                      International Congress on Animal Reproduction 講演要旨集P24(1996)