貯蔵中に発生する鹿肉の不快臭の原因と制御方法
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要約
鹿肉では熟成中に脂質酸化が進み不快臭が発生する場合がある。この不快臭は脱気包装によって抑えることが可能である。さらに、と畜前にビタミンEを、筋肉内濃度が9mg/kg以上になるように給与することでも抑制することが出来る。
- 担当:東北農業試験場・畜産部・栄養生理研究室
- 連絡先:019-643-3543
- 部会名:畜産(家畜)
- 専門:加工利用
- 対象:野生動物
- 分類:指導
背景・ねらい
野生鹿頭数の増加に伴い、森林や農作物が被害を受けることが多くなっている.
人間が野生鹿と共存するためには頭数を適正に維持する必要がある。一方、
鹿肉は低脂肪で高蛋白な食材として注目されていることから、
野生鹿の有効な利用が望まれる。しかしながら、鹿肉は牛肉等と異なり、
貯蔵中に不快な臭いが発生する場合がある。そこで、
この原因を明らかにして不快臭の制御方法を開発する必要がある。
成果の内容・特徴
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不快臭の原因と抑制方法
と畜直後に鹿の胸最長筋を採取し、3度Cに貯蔵した。
貯蔵中に発生する不快臭の強さを鹿肉と牛肉で比較すると、
鹿肉では貯蔵7日目以降に不快臭が強くなる
(図1-a)。また、
脂質過酸化の程度を示すTBARS値の上昇も牛肉より速い
(図1-b)。従って、
牛肉と同様の取り扱いでは鹿肉を流通させることは出来ない。
脱気包装によって脂質過酸化が抑制され、不快臭が抑えられる
(図1)。
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抗酸化剤給与による抑制
酸化しやすい食肉は食材として利用し難い。と畜前にビタミンEを給与し、
筋肉内にビタミンEが9mg/kg以上蓄積されるとTBARS値の上昇が抑えられ
(図2-a)不快臭の原因物質とされる
ヘキサナールの発生が抑制される(図2-b)。
また、その他の揮発性物質の発生も抑制されている
(図3)。官能的にもビタミンEを給与された
鹿肉においては不快臭の発生が抑制される(図4)。
成果の活用面・留意点
鹿肉はと畜後の早い時期に脱気包装する必要がある。しかし、
筋肉の死後硬直前に除骨すると食肉を硬くするので注意を要する。
と畜前に給与するビタミンEの量及び投与期間と筋肉内への蓄積量の関係は
明確になっていない。しかしながら、少なくとも0.5gを21日間給与することで
筋肉への蓄積量を9mg/kg以上にすることが可能である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:鹿肉の高度利用のための肉質改善技術の開発
- 予算区分 :大型別枠(新需要)
- 研究期間 :平成6~9年度
- 発表論文等:貯蔵中に発生する鹿肉の不快臭と脂質酸化 日本畜産学会報 69:489-492.
1998.
Effect of α-tocopherol concentration on lipid peroxidation and
volatiles in raw venison during storage. 44th ICoMST, Barcelona.
686-687(1998)