製パン適性の高いコムギを選抜できるDNAマーカー

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要約

小麦粉の製パン適性に深く関与する高分子量グルテニンサブユニット「5+10」の簡易的な共優性DNAマーカーを開発した。

  • キーワード:コムギ、製パン適性、DNAマーカー、高分子量グルテニンサブユニット
  • 担当:東北農研・作物機能開発部・生物工学研究室、東北農研・作物機能開発部・麦育種研究室
  • 連絡先:電話019-643-3514、電子メールgoro@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・生物工学
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

最近、パン用国産コムギ品種に対する実需者の要望が全国的に高まっており、東北地方においても寒冷地向け早生・多収で、製パン適性 の高い 良質品種に対する要望が強い。コムギ高分子量グルテニン(HMWG)サブユニットは小麦粉の生地物性に影響を与えることが分かっており 、その中でもパン体 積を増大させることが知られているGlu-D1 座のサブユニット「5+10」の導入、選抜が育種現場で求められている(図1)。しか し、グルテニンタンパク質を従来のSDS-PAGEによる方法で分離・同定することは、時間も労力も掛かり非効率的である。そこで、HMWGサ ブユニット「5+10」を簡易に同定できるDNAマーカーを開発し、育種の効率化に寄与する。

成果の内容・特徴

  • HMWGサブニット「5+10」の有無を簡易的に判別できるDNAマーカーである。プライマーの配列および操作手順を図2に示す。
  • 「5+10」のシステイン残基への点突然変異(生地物性変化の原因と考えられている)領域に設計したプライマーによって、「5+10」 を持つときのみ現れるバンドを含むため、判別ミスを防ぐことができる。
  • Glu-D1 座の主要なサブユニットである「2+12」、「2.2+12」、および「4+12」と「5+10」とを区別できるため、幅広い育種集団で利用できる(図3)。
  • ヘテロ個体の識別が可能な共優性マーカーであることから、様々な世代の育種材料に適用できる(図3)。
  • 低アミロースコムギを選抜するためのWx-B1 座のマーカー(Nakamuraら, 2002)とのマルチプレックスPCRが可能である(図 4)。

成果の活用面・留意点

  • パン用コムギ品種の開発にあたって、交雑初期世代では他のサブユニットで固定した系統を除去し、後期世代では「5+10」で固定し た系統を選抜することにより、効率的に「5+10」の導入が行える。
  • 本マーカーの作成に用いたGeneAmp(R) PCR system 9700(PE Applied Biosystems)以外のPCR装置では、プライマー濃度等の条件検討が必要な場合がある。
  • マルチプレックスPCRでは、反応液に各0.2uMのWx-B1 判別用プライマーを加える。

具体的データ

図1.小麦粉の製パン性試験.左:ハルイブキ(5+10有),右:コユキコムギ(5+10無).

 

図2.コムギ高分子量グルテニンサブユニット「5+10」判別用DNAマーカーのプライマー配列と操作手順

 

図3.コムギ高分子量グルテニンサブユニットの標準品種および分離集団を用いた

 

図4.マルチプレックスPCRによる高分子量グルテニンサブユニット「

 

その他

  • 研究課題名:コムギ高分子量グルテニンサブユニットのDNAマーカーの開発
  • 課題ID:05-06-05-01-17-03
  • 予算区分:交付金(所特定)
  • 研究期間:2003年度
  • 研究担当者:石川吾郎・中村俊樹・齊藤美香・中村和弘・伊藤裕之