北東北地域のケンタッキーブルーグラス優占草地の実態と成立要因
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要約
北東北地域の公共牧場では繁殖牛放牧のKb優占草地が多く、経年化し、窒素施用量が少なく、酸性土壌化している。またKb優占草地の成立要因として長草型草種を抑制する長年の放牧、低施肥条件、低土壌pH及び土壌中N蓄積によるシロクローバの抑制が考えられる。
- キーワード:ケンタッキーブルーグラス優占草地、公共牧場、放牧、永年草地・放牧
- 担当:東北農研・畜産草地部・放牧管理研究室
- 連絡先:電話 019-643-3562、電子メール tsuto@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・畜産、畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
北東北地域の公共牧場において、近年、預託頭数が減少し、草地の利用率が低下傾向にある中で、ケンタッキーブルーグラス(Kb)の優占する草地が増加し ているという。しかし、その最新の実態及びKbが優占する原因は十分に明らかにされていない。そこで草地管理の基礎的資料とするため、公共牧場における Kb優占草地の利用形態、造成後年数や施肥管理等の状況及び土壌の状態や放牧草のミネラル等の実態を明らかにする。また、これらの実態からKb優占草地の 成立要因を整理する。
成果の内容・特徴
- 調査した北東北地域の7ヶ所の公共草地(青森県1、秋田県2、岩手県4)における22草地の内、放牧地が14で平均造成後年数は15.1年で、黒毛和種及び日本短角種の繁殖牛が放牧されている例が多い(表1)。
- 放牧地の主要草種はKb、オーチャードグラス、ペレニアルライグラス、シロクローバ(Wc)等で、特にKbは14放牧地中6草地(放牧地a,b,e,f,j,k、43%)で優占する(表1)。
- Kb優占草地の造成後年数は平均23.2年で経年草地が多く、N施用量は年間53kg/haと少なく、土壌改良資材の施用も少ない(表1)。
- Kb優占草地は、他草種優占草地に比較して、土壌pHが低く、土壌及び牧草中N含量が高く、牧草中のミネラル含量やそのバランスに問題はない(表2)。
- Kb優占草地の成立要因として、他草種の生育を抑え短草型草種であるKbの生育に有利に働く要因が考えられる。即ち、長草型 草種の生育を抑制する長年の放牧及び低施肥管理、また、Wcの生育を抑制する土壌改良資材の不足による土壌pHの低下及びKbのN利用効率の低さによる土 壌中Nの蓄積などが考えられる(表1、2、図1)。
成果の活用面・留意点
- 北東北地域の公共草地において、Kb優占草地を低投入持続型草地として見直す際の参考となる。
- Kb優占草地の更なる特性を示すためには、放牧収容頭数など家畜生産性に関わる項目を調査する必要がある。
具体的データ

その他
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研究課題名:北東北地域の公共草地における利用管理と植生・ミネラルバランスの実態調査
- 課題ID:05-05-04-01-07-03
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2002∼2003年度
- 研究担当者:菅野勉、梨木守、東山由美
- 発表論文等:菅野ら(2003)日草誌49:336-345