セイヨウコナガチビアメバチのキャベツの総合的害虫管理への利用
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要約
北東北地域の夏どりキャベツのコナガ幼虫密度は、セイヨウコナガチビアメバチ既交尾雌成虫の株あたり合計約0.1頭放飼と、天敵類に悪影響の少ない選択性殺虫剤等の利用によって慣行防除並みに抑制できる。
- キーワード:セイヨウコナガチビアメバチ、コナガ、キャベツ、IPM、選択性殺虫剤
- 担当:東北農研・地域基盤研究部・害虫生態研究室
- 連絡先:電話019-643-3466、電子メールtakashino_k@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・生産環境(病害虫)
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
近年、食の安全に対する消費者の志向や環境負荷軽減の観点から化学農薬のみに頼らない病害虫防除体系の確立が求められており、商品化された天敵等の生物的
防除資材の利用も盛んになりつつある。しかし、現在これらの利用は主に施設栽培に限られており、耕地面積が大きく、開放系であるため生物的、物理的環境要
因の影響を受けやすい露地栽培での利用はほとんど検討されていない。そこで、コナガの有力な天敵寄生蜂セイヨウコナガチビアメバチの利用を中心としたキャ
ベツの総合的害虫管理技術の確立を図る。
成果の内容・特徴
- セイヨウコナガチビアメバチはコナガに寄生するヨーロッパ原産の体長4~5mmのヒメバチ科の単寄生蜂である。
- 北東北地域の夏どりキャベツ圃場では、セイヨウコナガチビアメバチの既交尾雌成虫を、株あたり合計0.1頭以上を目安に、定植時処理殺虫剤の効果がなくなるころから数回に分けて放飼する。
- コナガ以外の害虫として北東北地域のキャベツ栽培で問題となるヨトウガやタマナギンウワバ、アブラムシ類等に対しては、天敵に悪影響の少ない定植時処理殺虫剤やBT剤、IGR剤、インドキサカルブMP剤、交信攪乱剤などの利用と土着天敵の保護により防除する。
- 上記の防除を実施することで、コナガ幼虫密度を慣行防除と同程度もしくはそれ以下に抑制できる(図1)。コナガ以外の害虫についても選択性殺虫剤等による適期防除によって防除できる(データ省略)。
成果の活用面・留意点
- セイヨウコナガチビアメバチは現在、農薬登録されておらず、供給体制も整っていない。
- セイヨウコナガチビアメバチの放飼密度は株あたり0.1頭を基本とするが、外部から大量のコナガが飛来してきた場合などには追加放飼する必要がある。
- セイヨウコナガチビアメバチはアブラナ科作物のある隣接圃場に拡散するので、地域単位の導入が望ましい。
- コナガ以外の害虫では、とくにヨトウガの適期防除に留意する。ヨトウガの中老齢幼虫やアブラムシ類が多発した場合は、天敵に悪影響のある殺虫剤の使用もやむをえない。
具体的データ
その他
- 研究課題名:寄生蜂の利用によるコナガ防除技術の実証
- 課題ID:05-08-03-*-15-03
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001~2003年度
- 研究担当者:髙篠賢二、榊原充隆