寒冷地黒ボク土畑地での堆肥の施用は地温を上昇させる

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要約

寒冷地黒ボク土畑地で堆肥を施用することにより地温が上昇する。その上昇の程度は堆肥の施用量が多いほど大きい。これは、堆肥施 用によって土壌表層での毛管水の連絡が切断されやすくなることに、その一因がある。

  • キーワード:草地生産管理、地温、家畜ふん尿
  • 担当:東北農研・畜産草地部・飼料生産研究室
  • 連絡先:電話019-643-3564、電子メールdeguchi@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・畜産、東北農業・生産環境(土壌肥料)、畜産草地、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

地温は植物生育に大きな影響を及ぼす要因である。特に、春先の低温によってしばしば遅延型冷害に見舞われる寒冷地おいて は、地温上昇を図るためにさまざまな栽培技術の開発が進められている。堆肥施用は古くから低温時にその効果が高いと言われているが 、堆肥施用と地温の関係 についての検討はほとんどなされていない。そこで、本研究では施用堆肥の種類および量が地温に及ぼす影響を検討する。

成果の内容・特徴

  • 2年間にわたり4月上旬に水分含量や成分組成の異なる 4種類の堆肥を3水準(4t、8t、16t/10a)で施用した堆肥単用の12処理と、対照として化学肥料を単用した1処理の計13処理について、 2002年と2003年の2年間(5月1日~10月15日)の表層から10cmの深さの地温を裸地条件で測定した。
  • 施用される堆肥の乾物量が多いほど地温の上昇程度は大きくなる。また、施用乾物量と日平均地温との間に高い相関関係が認められ る。(図1)。
  • 降雨直後における土壌水分の垂直分布は、牛糞堆肥16t(現物)区と化学肥料区でほぼ同様の傾向を示す。一方、晴天が続くことによ り、表層1cmまでの水分は堆肥区で極端に低下するのに対し、1cmより下層では化学肥料区で大きな水分の低下が認められる(図2)。す なわち、堆肥施用により毛管連絡が阻害され蒸発が抑制され、表層での潜熱伝導が小さくなることが地温上昇の要因の一つと考えられる 。

成果の活用面・留意点

  • 寒冷地において堆肥を利用する際の基礎的知見となる。
  • 寒冷地黒ボク土畑地での裸地条件における結果であるため、作付条件や他の土壌型では別途検討が必要である。

具体的データ

図1.測定全期間(5/1~10/15)の日平均地温と施用乾物量の関係

 

図2.雨天直後(左)と晴天4日後(右)における土壌水分の垂直分布(2003年)

 

その他

  • 研究課題名:寒冷地における家畜ふん尿堆肥を利用したトウモロコシ栽培技術の開発
  • 課題ID:05-01-04-*-21-03
  • 予算区分:日本短角種
  • 研究期間:2002~2003年度
  • 研究担当者:出口新、魚住順、河本英憲、田中治
  • 発表論文等:出口ら(2003)東北農業研究 56:115-116