うね内部分施用法を用いた夏秋キャベツ作の窒素収支に基づく施肥削減量

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要約

夏秋キャベツ作の窒素収支によれば、慣行施肥量では窒素施肥量は過剰となる。うね内部分施用法を用いると、結球部搬出では慣行量の50%削減、全量または地上部搬出では30%削減が窒素収支から見て適正であるが、リン酸は蓄積、カリは収奪の傾向となる。

  • キーワード:夏秋キャベツ、うね内部分施用、施肥量削減、養分収支、可給態養分
  • 担当:東北農研・カドミウム研究チーム
  • 連絡先:電話019-643-3464
  • 区分:東北農業・基盤技術(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

野菜畑などで報告されている地下水の硝酸汚染など環境負荷を低減するには、施肥量削減のための実用的な技術の開発が強く望まれ る。東北農研で開発されたうね内部分施用技術は、うね中央部の定植位置付近(幅20cm・深さ20cm程度)のみに施肥を行い、キャベツ作等露地野菜作の 基肥施用量の削減をねらいとする。これまでに、全国各地で現地実証試験を実施し、うね内部分施用法により全面施用における施肥量を30~50%削減できる ことが示されているが、施肥削減量の違いによる収量・品質への影響、養分収支、土壌化学性への影響は明らかではないため、これらを勘案して施肥削減量の適 正化を図る。

成果の内容・特徴

  • うね内部分施用法により夏秋キャベツの慣行施肥量(キャベツ専用肥料120kg/10a施用)の50%削減かつ全量搬出を3 カ年継続すると、慣行施肥量の全面施用の場合と比較して、出荷規格内の1個重、新鮮重およびビタミンC含量は変わらないが、窒素含有率、窒素吸収量および 硝酸含量は低下する(表1)。
  • キャベツ作の窒素収支からは、慣行施肥量の場合は全量搬出でも4kg/10a程度過剰となり、窒素施肥量の削減が必要である(表2)。結球部搬出では慣行施肥量の50%削減、全量または地上部搬出では30%削減が望ましい。しかし、これらの場合にリン酸収支はプラス、カリ収支はマイナスと試算され、リン酸は蓄積、カリは収奪の傾向となる。
  • 圃場試験跡地土壌の無機態窒素量は、慣行施肥量の全面施用に比べてうね内部分施用法による慣行施肥量の50%削減および30%削減で少ない(図1)。
  • うね内部分施用法による慣行施肥量の50%削減および30%削減の場合、跡地土壌の深さ30cmまで可給態リン酸はうね>うね間、交換性カリはうね<うね間となり、リン酸はうねに蓄積、カリはうねから収奪の傾向となり、収支の値と概ね対応する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • うね内部分施用は、うね立て同時部分施用機(http://www.naro.affrc.go.jp/tarc/symple_blog/unetate/index.html)を用いて行った。また、有機質資材は施用しなかった。
  • キャベツ栽培試験は、東北農研黒ボク土畑圃場で実施した(表1および表2の試験圃場の作土:可給態窒素4.2、5.2 mg/100g、リン酸吸収係数1887、1889 mg/100g)。
  • 慣行施肥量の30%~50%削減を数年間継続した場合、作付け前の土壌診断の結果に基づき、リン酸およびカリ施肥量の適正化を図ることが必要である。
  • うね内部分施用法を用いた夏秋キャベツ作の新たな施肥基準量策定の参考となる。

具体的データ

表1 キャベツ作の施肥基準量50%削減の3カ年継続における収量、品質等への影響

 

表2 施肥基準量の50%削減、30%削減および施肥基準量における養分収支

 

図1 栽培跡地土壌の無機態窒素 図2 栽培跡地土壌の可給態リン酸と交換性カリ

 

その他

  • 研究課題名:農作業の高精度化・自動化等による高度生産システムの開発及び労働の質改善のための評価指標の策定
  • 課題ID:223-a
  • 予算区分:交付金プロ(精密畑作)
  • 研究期間:2005~2007年度
  • 研究担当者:三浦憲蔵、青木和彦、吉住佳与、戸上和樹、工藤一晃、屋代幹雄
  • 発表論文等:三浦憲蔵ら(2007)東北農業研究、60: 199-200