イネの極多肥栽培において栽培後期の追肥はいもち病を助長しない

要約

イネの極多肥栽培において、幼穂形成期までの追肥を行わず、栽培後期の減数分裂~出穂期に集中して追肥することにより、いもち病の多発は助長されない。さらに、栽培後期の追肥により粗玄米タンパク含量が上昇する。

  • キーワード:いもち病、いもち病抵抗性、極多肥栽培、後期追肥、減農薬
  • 担当:新世代水田輪作・高能率水田輪作
  • 代表連絡先:電話 0187-66-2774
  • 研究所名:東北農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

イネいもち病は発生初期の防除が重要である。食用米生産においては幼穂形成期までに普通期追肥が行われ、食味を悪くする多肥栽培や栽培後期である出穂期以降の追肥は避けられている。しかし、食味を考慮する必要のない米を生産する場合、多肥条件および出穂期以降の追肥が可能である。そこで、多収を目的とした多肥栽培において、いもち病発生初期に当たる普通期追肥の代わりに、いもち病発生初期に当たらない栽培後期の追肥が、いもち病発病に対して与える効果を明らかにする。さらに、後期追肥と薬剤防除とを組み合わせた場合の減農薬成分数についても明らかにする。

成果の内容・特徴

  • いもち病感受性品種「萌えみのり」を極多肥条件で栽培しても、後期追肥によりいもち病の多発は助長されない。(表1)
  • 葉いもちについて、各年度の普通期追肥区の最多薬剤成分数(3~4成分)に対し、後期追肥区の2成分以下の薬剤処理区で同程度の防除価を示したことから、後期追肥と薬剤を組み合わせると、薬剤2~3成分相当の減農薬効果がある(表1)。
  • 穂いもちについて、各年度の普通期追肥区の最多薬剤成分数(3~4成分)に対し、2010年の後期追肥区1成分区を最大値として、2013年の後期追肥区1~3成分区で若干劣る防除価を示したことから、後期追肥と薬剤を組み合わせると、薬剤2成分以下相当の減農薬効果がある(表1)。
  • 後期追肥による減収は認められず、粗玄米タンパク含量は有意に上昇する(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 家畜糞堆肥2t/10a、基肥8kg/10aの多窒素条件下での成果である。
  • 東北地域のいもち病発生生態および水稲栽培への適用を想定した成果である。
  • 減農薬成分数は、普通期追肥区の薬剤3~4成分区に対し、同等の防除価を示す後期追肥区の薬剤成分数区の成分数差である。
  • 堆肥を連用するとその影響で後期追肥のいもち病発病を助長しない効果が低下する可能性がある。
  • 冷害年の後期追肥によるいもち病を助長しない効果は不明である。
  • 本成果は飼料用米栽培においても適用できる可能性がある。

具体的データ

図1,表1

その他

  • 中課題名:作業の高速化による高能率低投入水田輪作システムの確立
  • 中課題整理番号:111b1
  • 予算区分:交付金、委託プロ(国産飼料)
  • 研究期間:2010~2014年度
  • 研究担当者:鬼頭英樹、善林 薫、中島敏彦
  • 発表論文等:鬼頭ら(2014)北日本病害虫研報、65:13-18