セル苗の深植え定植による収穫期のキャベツ結球部の傾き抑制

要約

キャベツセル苗の培地表面が地表面から2cm程度下になるよう深く定植することで、機械収穫で問題となる収穫期の結球部の傾きを軽減できる。その際、苗を深植えしても収量は低下しない。

  • キーワード:加工業務用キャベツ、結球部の傾き、機械収穫、深植え定植
  • 担当:業務需要畑野菜作・夏秋期野菜生産
  • 代表連絡先:電話 019-643-3414
  • 研究所名:東北農業研究センター・畑作園芸研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年需要が高まっている加工業務用キャベツでは、省力、低コスト化を目指して機械化一貫体系の構築が求められており、その核となる機械収穫では、結球部の傾きが機械作業性を低下させる重要な課題である。また、傾きが大きい場合には中耕・培土・追肥といった機械による他の管理作業の弊害にもなりかねない。そのため、結球部の傾きを制御する技術として、育種や育苗技術に加え、より直接制御可能な栽培技術の開発が求められている。そこで、定植時のセル苗の植付け深さに注目し、キャベツ結球重を低下させずに結球の傾きを軽減する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • キャベツセル苗を深く定植することで、標準植えおよび浅植え(図1)に比べ、収穫期における結球部の傾きを軽微な範囲(垂直方向から0-20°程度)に抑えることができる(図2)。
  • 結球部の傾きに関与する項目として、軸(地際から結球部下までの茎部分)は深く定植した場合に短く、長さ当たりの重さが大きくなる傾向がみられたが、有意な差は認められなかった(表1)。また、植付け深さが深くなると、地表から深さ5-10cmにおける細根(径0-1mm)および太い根(径1-5mm)が相対的によく発達する傾向がある(図3)。
  • 地表面から2cm程度であれば、深く定植しても収量に差は認められない(表1)。

成果の活用面・留意点

  • この成果は、キャベツ品種「おきな」および「彩音」を用いて宮城県岩沼市の生産法人の砂地圃場(砂壌土)で夏秋期(播種7/17、定植8/18)に、キャベツ機械化一貫栽培体系の現地実証試験を行う中で、施肥量:N:P2O5:K2O=25:20:25 kg 10a-1(「おきな」)およびN:P2O5:K2O=30:20:30kg 10a-1(「彩音」)でうね立て(うね幅60cm、うね高20cm、株間34cm)・中耕培土1回の栽培で得られた結果である。
  • 128穴セルトレイでハウス内育苗し、「おきな」は4.4葉期、草丈10.9cm、「彩音」は3.3葉期、草丈10.8cmで半自動移植機を用いて定植したが、2cm程度の植付け深さであれば生長点部分はほとんど覆土されない。

具体的データ

図1~3,表1

その他

  • 中課題名:業務・加工用野菜の安定供給に向けた夏秋期生産技術の開発
  • 中課題整理番号:113a3
  • 予算区分:その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2013~2014年度
  • 研究担当者:山本岳彦、松尾健太郎、山崎篤
  • 発表論文等:山本ら(2015)根の研究、24(1):3-10