飼育環境の違いによるストレス反応はウシの品種間で異なる
要約
ストレスの指標となる尿中コルチゾールレベルは、ホルスタイン種では放牧飼育下の方が舎飼い飼育下よりも高い。一方日本短角種では、舎飼い飼育下の方が放牧飼育下よりも高い。
- キーワード:放牧、舎飼い、ホルスタイン種、日本短角種、尿中コルチゾール
- 担当:自給飼料生産・利用・寒冷地肉用牛飼養
- 代表連絡先:電話 019-643-3680
- 研究所名:東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
畜産業界においてもアニマルウェルフェアに対する取り組みが積極的に行われており、飼育環境におけるウシのストレスレベルを把握することは非常に重要である。そこで、日本短角種およびホルスタイン種を用い、放牧や舎飼いといった飼育方式と暑熱が、尿中コルチゾールレベルに及ぼす影響について調べ、飼育環境の違いに対するストレス反応について明らかにする。
成果の内容・特徴
- 様々な飼養履歴をもつホルスタイン種50頭(延べ446頭)、日本短角種17頭(延べ187頭)を用い(表1)、放牧および舎飼い時に、表2に示す気象条件のもとで尿を採取し、尿中コルチゾールレベル(対尿中クレアチニン比;ng/mg)を測定する。
- ホルスタイン種の尿中コルチゾールレベルは、放牧飼育下の方が舎飼い飼育下よりも高い。これに対して日本短角種では、舎飼い飼育下の方が放牧飼育下よりも高い(図1)。
- ホルスタイン種では、放牧時において、泌乳量等に負の影響が見られるとされるTHI≥72の方がそれ未満よりも尿中コルチゾールレベルは高い(図2)。これに対して日本短角種ではTHI≥72による影響は認められない。
- 以上のように、品種によって飼育方式や暑熱に対するストレス反応に違いが見られる。
成果の活用面・留意点
- 飼育環境がウシに及ぼすストレスレベルを評価する上での基礎的資料として活用できる。
- ストレス指標としての尿中コルチゾールレベルについては、2006年度研究・参考成果情報「放牧牛をつなぎ飼い牛舎に収容すると尿中コルチゾールレベルは高まる」を参考にする。
具体的データ
その他
- 中課題名:寒冷積雪地帯での土地資源と自給飼料を活用した肉用牛飼養技術の開発
- 中課題整理番号:120d2
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2006~2014年度
- 研究担当者:東山由美、小松篤司、深澤充、東山雅一、池田堅太郎、上田靖子、秋山典昭、朝隈貞樹
- 発表論文等:
1)Higashiyama Y. et al. (2013) Livest. Sci. 155(1):86-91
2)Higashiyama Y. et al. (2014) J. Anim. Sci. Adv. 4(8):1009-1016