苗の引き抜き抵抗を利用した葉菜類セル成型苗の発根力の簡易測定法

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要約

葉菜類のセル成型苗を定植した後、引き抜き応力測定機器を用いて苗を引き抜き、その際 の最大抵抗値を測定することにより、苗の発根力の簡易測定法を開発した。

  • キーワード:セル成型苗、引き抜き応力測定機器、最大抵抗値、苗の発根力、簡易測定法
  • 担当:野菜・茶業試験場生理生態部作型開発研究室
  • 連絡先:0592-68-4631
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:栽培
  • 対象:葉菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

葉菜類のセル成型苗は、育苗の省力化と定植の機械化が可能なことから、近年急速に普及しつつある。しかし、セル成型苗は少量の培養土で、かつ、高密度で育苗されるため、苗質が変化しやすい傾向がある。セル成型苗の発根力は、定植後の活着と密接な関係があり、苗質評価指標の一つとして、その評価法の開発が強く望まれている。そのため、セル成型苗の発根力を簡易に評価する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • セル成型苗を5号素焼鉢に定植し一定期間生育させた後、オ-トグラフやプッシュ・プルゲ-ジ等の引き抜き応力測定機器を用いて苗を引き抜き、その際の最大抵抗値を測定することによって、新根の発生量を推定する。
  • 定植後8日目までは、定植後に発根した根量と引き抜き抵抗値との間には高い正の相関関係(r=0.997)があり、引き抜き抵抗値の測定で苗の発根力の評価が可能である。(図1)
  • 定植床の土壌粒度によって引き抜き抵抗値は変化するが、実測値からブランク値(定植直後の引き抜き抵抗値)を差し引くことで、土壌粒度の影響は排除できる。(図2)
  • 定植時に、セル成型苗の根鉢の直下にプラスチック板を埋設し、根を横方向に伸長させると、引き抜き抵抗値は大きくなり、少量の発根を精度よく測定できる。(図3)
  • 携帯型のプッシュ・プルゲ-ジを用い、引き抜き速度が約100cm/分以下であれば、オ-トグラフの場合と同様の結果が得られ、手動測定が可能である。(図4)

成果の活用面・留意点

  • 本評価法は、根鉢を形成した野菜・花き類セル成型苗の苗質評価法として活用できる。
  • 携帯型のプッシュ・プルゲ-ジを用いれば、圃場での測定も可能である。
  • 土壌水分が測定精度に影響するため、測定前に潅水し、土壌水分条件を同一にする必要がある。なお、均質な土壌を用いることとし、施肥等は特別に考慮しなくてよい。

具体的データ

図1.定植後の新根発生量引き抜き抵抗値との関係

図2.土壌粒度が引き抜き抵抗値に及ぼす影響

図3.プレート埋設が引き抜き抵抗値に及ぼす影響

図4.プッシュ・ プルゲ-ジによる発根力の簡易測定

その他

  • 研究課題名:セル成型苗の根の生理生態特性の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成7~9年)
  • 研究担当者:吉岡宏・清水恵美子・藤原隆広
  • 発表論文等:オ-トグラフによるセル成型苗の活着力の評価法.園学雑,64(別2), 354-355, 1995.