アリルイソチオシアネートによるカットキャベツの品質保持機構
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要約
キャベツに含まれるアリルイソチオシアネートは、カットキャベツの褐変やエチレン生成 に関与する酵素が傷害により誘導される段階を阻害する機構により、品質保持に寄与して いることが明らかになった。
- キーワード:アリルイソチオシアネート、カットキャベツ、褐変、エチレン生成、酵素、傷害、誘導、阻害、品質保持
- 担当:野菜・茶業試験場生理生態部輸送貯蔵研究室
- 連絡先:0592-68-4635
- 部会名:野菜・茶業、食品
- 専門:食品品質、加工利用
- 対象:葉菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
アリルイソチオシアネート(AITC)は、キャベツの主要な辛味物質であり、組織が切断傷害を受けると生成する。辛いキャベツの品種ほどカットキャベツにしたときに褐変しにくく、エチレン生成も少ないことが矢野ら(1986)によって明らかにされている。そこで、カットキャベツの褐変やエチレン生成をAITCがどのような機構で抑制しているのかを、生理生化学的に明らかにする。
成果の内容・特徴
- カットキャベツの褐変は時間と共に進行したが、辛い品種に含まれるAITC量に相当する2.5mg/100g以上の濃度で処理すると、褐変は強く抑制された(図1)。この時、褐変に関与する酵素(PAL、PPO)の活性や、基質含量の増加も低く抑えられた。
- カットキャベツのエチレン生成も時間と共に急激に増加したが、AITCを同様の濃度で処理すると、エチレン生成は強く抑制された(図1)。この時、エチレン生成に関与する酵素(ACC合成酵素)の活性や、前駆物質であるACC含量の増加も低く抑えられた。また、AITCは呼吸の上昇も抑制した(データ略)。
- AITCがカットキャベツの褐変やエチレン生成を強力に抑制する機構は、AITCがそれらに関与する酵素の活性を直接に阻害するよりは、むしろそれらの酵素が傷害により誘導されてくる段階を強力に抑制するためであることが、酵素活性の阻害実験、各種阻害剤との比較実験ならびに、PAL酵素の免疫学的解析(図2)により明らかにされた(図3)。
成果の活用面・留意点
アリルイソチオシアネートによるカットキャベツの鮮度保持に関与する知見は、他の青果物の鮮度保持にも利用できる可能性がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:カットキャベツの生理生化学に関する研究
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成7年度(平成元~7年)
- 研究担当者:永田雅靖・壇和弘・山下市二
- 発表論文等:
1アリルイソチオシアネートによるカットキャベツの褐変抑制機構.日食工誌,39,322-326,1992.
2アリルイソチオシアネートによるカットキャベツのエチレン生成抑制機構.日食工誌,39,690-694,1992.
3アリルイソチオシアネートがカットキャベツのPAL活性の上昇を抑制する機構について.日食工誌,40,52-55,1993.
4カットキャベツの生理・生化学.日食工誌,41(10),741-746,1994.