2層3重空気膜の透明屋根構造による太陽熱集熱ハウスの開発

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要約

ハウスの屋根材として軽量で強度的に優れた空気膜構造を用い、保温性と採光性が優れ、 屋根構造を集熱装置とすることのできる省エネルギーハウスの原型を開発した。

  • キーワード:ハウス、空気膜構造、保温性、採光性、集熱装置、省エネルギー
  • 担当:野菜・茶業試験場施設生産部資材利用研究室
  • 連絡先:0569-72-1166
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:農業施設
  • 対象:野菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ハウスの構造は一部の改良はなされているものの基本構造は数十年間変わっていない。そこで、施設園芸ハウスの基本的な性能である採光性、保温性等を検討し、構造や省エネルギーなど総合的な観点から性能向上を図るハウスを開発する。

成果の内容・特徴

  • ハウスの屋根材として大スパンで軽量、強度的に優れた空気膜構造を採用する。ハウスの屋根部は(図1)に示すように、3枚のプラスチックフィルムから構成される。その上層空間はファンによって常時加圧された空気(5~15mmH2O)により構造的に強度を支える役割を果たし(図2)、下層の隙間は流水によって太陽熱の集熱を行う。上部と下部のフィルムは張力に対する伸びの少ないポリエチレン系、中間のフィルムは伸びやすい塩化ビニルフィルムを用いて、構造的な強度と流水のための薄層を形成する。
  • ワイヤーサスペンション構造(図4)によって骨材が細く少ないために、また下層が水で充填されているためにフィルム3枚であるもののフィルム2枚の透過率に匹敵し、採光性は同等以上である。保温性は既往の研究結果が示すように空気膜構造のため優れている。
  • 屋根面はほとんどが透明な集熱器となり、その集熱能力はと従来の地中熱交換ハウスと同程度(40kcal/m2h,(図3)であるが、熱媒体が液体であるために取り扱いやすく、図1に示す省エネルギーハウスへの適用が可能である。図3の負の集熱(放熱)の結果は夜間保温のためのウォーターカーテンとしての利用が可能であることを示している。アオミドロの発生は硫酸銅の混入で抑えらえる。高濃度の金属イオンにすれば日射の赤外部の吸収によって集熱能力の向上が期待でき、さらに色素の混入による遮光等の応用が可能である。

成果の活用面・留意点

太陽熱の集熱装置として実用化するための蓄熱や放熱のシステム化が必要である。

具体的データ

図1.太陽熱集熱システム

図2.空気膜による屋根構造

図3.膜内気温-水温の差と集熱量

図4.ワイヤーサスペンションハウスの構造

 

その他

  • 研究課題名:二層三重膜ハウスに関する研究
  • 予算区分:経常、共同研究
  • 研究期間:平成7年度(平成6~7年)
  • 研究担当者:島地英夫・柳雅之(鹿島建設技術研究所)
  • 発表論文等:
    ①屋根用空気膜,特許出願,1995.
    ②2重空気膜構造ハウスによる集熱,農業気象・生物環境合同大会要旨,372-373,1994.
    ③空気膜とワイヤーサスペンション構造を用いたハウスの試作.農業気象・生物環境・農業施設合同大会要旨,408-409,1995.