青枯病・半枯病抵抗性台木用ナス新品種'台太郎'の育成

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要約

台木用ナス'台太郎'は青枯病と半枯病に複合抵抗性を有し、'トルバム・ビガー'より も発芽と初期生育が優れ、接ぎ木が容易で機械接ぎ木適性を有する。穂木品種の収量及び 果実品質は'トルバム・ビガー'台のものと同等以上である。

  • キーワード:台木用ナス、'台太郎'、青枯病、半枯病、複合抵抗性、機械接ぎ木適性
  • 担当:野菜・茶業試験場野菜育種部育種第3研究室、(株)テクノグラフティング研究所
  • 連絡先:0592-68-4653
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:育種
  • 対象:果菜類
  • 分類:普及

背景・ねらい

青枯病及び半枯病はナスの重要な土壌病害であり、実際栽培ではナス属近縁種の'トルバム・ビガー'を主とする抵抗性台木への接ぎ木により被害を回避している。一方、全自動接ぎ木機械が最近実用化されたが、'トルバム・ビガー'は発芽、初期生育、生育揃いが不良で機械接ぎ木には適さない。そこで、'トルバム・ビガー'の上述の欠点がなく、機械接ぎ木適性を有し、青枯病と半枯病に複合抵抗性を有する台木用ナス品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 育成経過'台太郎'はインドから導入された青枯病抵抗性の'WCGR112-8'を種子親に、マレーシアで収集され、その後の検定で青枯病と半枯病に複合抵抗性が認められた'LS1934'を花粉親にして作出されたF1品種である。本品種は青枯病及び半枯病に抵抗性で、機械接ぎ木適性を有し、穂木品種の収量及び果実品質が優れ、実用台木品種として有望と判断されたので、平成7年9月に'なす農林交台2号'として登録された。
  • 特性の概要1)青枯病と半枯病に強度複合抵抗性で(表1)(表2)、草丈はやや高く、茎は太く淡紫色を帯び、果実は球形、果皮は濃紫色で果実の下半に斑紋を有する。2)ナス栽培種のF1品種であり、近縁種の'トルバム・ビガー'よりも発芽、初期生育、生育揃いが優れ、接ぎ木が容易で、機械接ぎ木適性を有する。(表3)3)穂木品種の前期上物収量は'トルバム・ビガー'台のものよりも多く、総収量は'トルバム・ビガー'台のものと同等である。(表4)4)穂木品種の果実は'トルバム・ビガー'台のものよりもやや長く、光沢が優れる。

成果の活用面・留意点

ナスの青枯病汚染地帯の夏秋季栽培に適する。半身萎ちょう病等他の病虫害抵抗性は無く、また、青枯病抵抗性は免疫抵抗性でなく、高温や高菌密度条件下では発病することがあるので、土壌消毒や耕種的防除が必要である。穂木品種の草勢は'トルバム・ビガー'台に比べて少し弱いので、栽培後期まで草勢を維持する肥培管理が必要である。

具体的データ

表1.'台太郎'の青枯病抵抗性

表2.'台太郎'の半枯病抵抗性

表3.'台太郎'の初期生育

表4.'台太郎'の収量性

その他

  • 研究課題名:機械化接ぎ木装置に適応した野菜土壌病害抵抗性台木の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成2~6年度)
  • 研究担当者:門馬信二・赤澤茂樹・下坂欽也
  • 発表論文等:台木用ナス品種'台太郎'の育成経過とその特性.園学雑,65(別1),(投稿中).