ハクサイ類の根こぶ病抵抗性遺伝子と連鎖したRAPDマーカー

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要約

ハクサイ類の根こぶ病抵抗性素材として利用されている飼料用カブが持つ抵抗性遺伝子と連鎖したRAPDマーカーを検索し、幼苗期での早期予備選抜に有効なマーカーを得た。

  • キーワード:根こぶ病抵抗性素材、カブ、抵抗性遺伝子、RAPDマーカー、早期予備選抜
  • 担当:野菜・茶業試験場野菜育種部育種第4研究室、育種第1研究室
  • 連絡先:0592-68-4654
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:バイテク
  • 対象:葉菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ハクサイ類の根こぶ病は難防除病害で、汚染地域では根こぶ病抵抗性(CR)品種が利用されている。しかしながら、近年CR品種がり病化する事例が増加し、新たな抵抗性品種の育成が望まれている。CR育種素材はハクサイ類と形質差の大きい飼料用カブであるため、育種が困難である。そこで、効率的に育種を進める目的で、抵抗性の飼料用カブとり病性のハクサイとのF1の小胞子由来再分化植物の自殖系統を用い、抵抗性と連鎖したRAPD(random amplified polymorphic DNA)マーカーを検索した。

成果の内容・特徴

  • 241個のプライマーを用いて、CR飼料カブ'Siloga S2'(Silogaを2回自殖した系統)、CR'はくさい中間母本農4号'(Silogaが抵抗性素材)及びり病性ハクサイ'Homei P09'('Homei'の小胞子由来doubled haploid(DH)系統)を調査の結果、抵抗性系統で検出され、り病性系統で検出されない22本のバンドを得た。
  • 'Homei P09×Siloga S2'由来のDH36系統について、病土挿入接種法(安濃菌使用)による根こぶ病抵抗性と上記の22個のバンドの有無との関係を比較し、抵抗性系統に特異的に出現するバンド(620bp:RA12-75A、表1)を得た(図1)(図2)。DH36系統中21系統で、このマーカーが検出され、この中に抵抗性を持つ20系統中16系統が含まれた(データ省略)。
  • 15個のDNAバンドについて、バンドが検出されたDH系統と検出されなかったDH系統との平均発病株率の差を調査し、両者の値が有意に異なる3本のバンドを得た。(表1)(表2)。これらは抵抗性遺伝子座と連鎖すると考えられる。
  • これらのバンドの検出試料は、少量の本葉で可能であり、早期に幼苗検定が行える。

成果の活用面・留意点

  • 'Siloga'を抵抗性素材とする根こぶ病抵抗性育種において、得られたRAPDマーカーは根こぶ病抵抗性個体の幼苗期での予備選抜に利用できる。
  • 得られたマーカーは根こぶ病抵抗性遺伝子に連鎖しているが、抵抗性遺伝子そのものではない。したがって、連鎖関係がなくなれば抵抗性の選抜には用いることはできない。
  • WE22Bは根こぶ病抵抗性遺伝子座と連鎖しているが、り病性ハクサイ'Homei P09'で検出されるバンドであり、選抜に用いる際に留意する。

具体的データ

図1.根こぶ病抵抗性及びり病性系統のRAPDによるバンドパターン

図2.'Hpmei'及び'Siloga'のRAPDによるバンドパターン

表1.根こぶ病抵抗性遺伝子のDNAマーカー

表2.RAPDマーカーの有無と根こぶ病平均発病株率との関係

その他

  • 研究課題名:
    1.DNAマーカーを利用したハクサイ根こぶ病抵抗性検定方法の確立
    2.野菜におけるRFLP利用技術の開発
  • 予算区分:バイテク育種、経常
  • 研究期間:平成7年度(1.平成7~9年、2.平成3~7年)
  • 研究担当者:釘貫靖久・平井正志・由比真美子
  • 発表論文等:RAPDマーカーを利用した根こぶ病抵抗性検定法の開発I.カブの抵抗性と連鎖したDNAマーカー.育雑,44(別2),1995.