促成イチゴ果実の日持ち性評価法と品種間差異

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要約

促成イチゴ完熟果実の常温保存では、外観劣化からみた日持ち性には主として光沢低下と着色進化が関与する。光沢低下の原因となる果肉軟化の指標には、収穫時の果肉硬度及び果皮貫入までの変形量の保存過程における増加程度が適当である。

  • キーワード:イチゴ、日持ち性、光沢低下、果肉軟化、果肉硬度、果皮貫入までの変形量
  • 担当:野菜・茶業試験場久留米支場育種第2研究室
  • 連絡先:0942-43-8271
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:育種
  • 対象:果菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

イチゴは傷みやすく、日持ち性に劣る果実の代表だが、近年は作期の拡大、産地の遠隔化及び流通の広域化が進み、流通過程での品質保持が重要になっている。このため低温流通システムの普及も著しいが、かつての品種と比較して相対的に日持ち性が向上した現在の品種でも、秋や春の温暖期には品質劣化が問題になっている。そこで促成イチゴの日持ち性に関わる要因を摘出し、その評価法を開発するとともに、品種間差異を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 促成イチゴの完全着色果の収穫後4日間の常温保存(15°C)では、経時的な果肉の軟化進行が果皮の緩みを通して光沢低下に影響しており、市場性に関わる外観劣化は光沢低下と着色進行によりほぼ説明される(表1)。なお、保存中の果皮硬度、及び糖度、酸度、ビタミンC(還元型アスコルビン酸)含量の経時変化は比較的小さい。
  • 果肉軟化進行の評価指標には、万能試験機(オートグラフ等)による貫入試験における変形量(プランジャー先端が果皮に接触してから貫入開始までの距離)の保存過程における増加程度が適当である。(図1)
  • 貫入開始までの変形量の常温保存下での増加程度には品種・系統間差異があり、収穫時の果肉硬度が高く、変形量の増加程度が小さい品種ほど、光沢低下が遅い。(表2)
  • イチゴ果実の着色過程における果肉硬度低下にはペクチン可溶化が関与するが、完熟果実の常温保存における果肉軟化にはペクチン可溶化の関与は小さい。(図2)

成果の活用面・留意点

  • イチゴでは、果肉硬度を高めると日持ち性は向上するが食味は低下する。このため果肉硬度に加え、果皮貫入開始までの変形量の保存過程における増加程度を評価することにより、日持ち性と食味の両者に配慮した選抜が可能になる。
  • 収穫時の果肉硬度及びその軟化進行程度は成熟期の温度に影響されることから、幅広い温度条件を経過する促成長期どり栽培では、時期を変えた数回の評価が望ましい。
  • 収穫後の保存過程における外観劣化には着色進行も関与することから、日持ち性評価に当たっては、色彩色差計等による果皮色の測定を並行して行う必要がある。

具体的データ

表1.外観評価に関する重回帰分析結果

 

図1.保存に伴う果実の物理性の推移

 

表2.保存に伴う果皮貫入時間変化の品種間差異

 

図2.保存に伴うペクチン組成の推移

 

その他

  • 研究課題名:市場性に関わるイチゴの生食適性要素の解明
  • 予算区分:一般別枠〔収穫後生理〕
  • 研究期間:平成7年度(平成4~6年)
  • 研究担当者:望月龍也・野口裕司・曽根一純
  • 発表論文等:
    ①イチゴ果実の成熟過程及び収穫後の物理性変化の品種間差異.園学雑,62(別1),312-313,1993.
    ②イチゴ果実の物理特性及び果実成分に及ぼす貯蔵及び高CO2濃度処理の影響.園学雑,64(別1),360-361,1995.